三重県の山奥で、オオサンショウウオをはじめとする有尾類を飼育する施設が、ひっそりと営業しています。その名は、日本サンショウウオセンター。
行ってみると、古めかしいけどしっかりした設備で、何種類かの有尾類が飼育されていました。以下、ご紹介します。
目次
日本サンショウウオセンターへのアクセス、行き方
日本サンショウウオセンターは、オオサンショウウオが実際に住む渓流のほとりにあります。当然、都市部からは離れた立地。
所在地は三重県ですが、近いのは名古屋でなく大阪。大阪から近鉄特急で名張まで1時間、名張から一駅の赤目駅が最寄駅です。
駅からはサンショウウオセンター方面へのバスが出ていて、10分少々乗って終点の赤目滝バス停で下車。赤目温泉の温泉街を抜けて山の方へ歩いて行くと、サンショウウオセンターにたどり着きます。
イモリサイズの子供から、定年間近の大型個体まで
日本サンショウウオセンターは、赤目渓谷の川沿いに立地しています。建物が赤目四十八滝散策ルートの入場口にもなっていて、サンショウウオセンターを含む渓谷エリアへの入場料はここで徴収されます。
入り口をはいると、いちばん最初のコーナーに並んでいたのが、小さいサイズのオオサンショウウオ水槽。
オオサンショウウオを飼育・展示する施設は珍しくありませんが、大体は1メートルサイズの成体を飼育しています。ところがここでは、オオサンショウウオの卵や、イモリサイズの幼体、ウーパールーパーサイズやナマズサイズの若い個体を見ることができます。
オオサンショウウオは長寿な生き物ですので、若いといっても10歳、20歳といったレベル。20歳でもまだ成体サイズには程遠いので、人間より成長は遅いと言えます。
オオサンショウウオの成体は、展示施設ではじっとしていることが多いのですが、幼体はよく動き回ります。ウーパールーパーサイズの幼体は、水槽の中を魚のように泳ぐ場面もありました。
なかなか見られない小さなオオサンショウウオや泳ぐオオサンショウウオ、必見です。
もちろん、普通サイズの成体も多く展示されています。オオサンショウウオは長寿なので、推定年齢65歳・「定年間近」(と書かれていた)の個体の展示もありました。
チュウゴクオオサンショウウオと交雑種
オオサンショウウオは日本の固有種ですが、近年では、チュウゴクオオサンショウウオという外来種のオオサンショウウオとの交雑が問題となっています。
すぐ近くにある赤目自然歴史博物館の展示パネルによれば、チュウゴクオオサンショウウオは、ワシントン条約で保護される1975年以前に、食用や漢方として輸入されていたとされる、とのこと。
日本サンショウウオセンターの展示水槽には、チュウゴクオオサンショウウオや、チュウゴクオオサンショウウオと在来オオサンショウウオとの交雑種が展示されていました。
パッとみた印象では、赤みが強く肌が凸凹・ザラザラした感じの日本在来のオオサンショウウオに対し、チュウゴクオオサンショウウオは灰色が強く肌がなめらかな感じがします。
前述の赤目自然歴史博物館の展示パネルには、赤目付近の二つの場所における交雑種の割合が示されていました。それによると、赤目付近でも場所によっては交雑種が2/3を占めるとのこと。
赤目は都市圏からそれなりに距離もあり、一見外国からの動物が持ち込まれるような立地には見えないのですが、意外と交雑種は多くいるようです。
オオサンショウウオは、世界に日本在来のオオサンショウウオ、チュウゴクオオサンショウウオ、アメリカオオサンショウウオの3種しかいないそうです。チュウゴクオオサンショウウオはチュウゴクオオサンショウウオで貴重な存在なので、悩ましい話です。
オオサンショウウオのほかに飼育されていたイモリ類
日本サンショウウオセンターの水槽は、渓流の脇に建つ立地をいかし、実際にオオサンショウウオが住む渓流の水を引いています。新鮮で冷たい水をリアルタイムで使えるため、高温が大敵のイモリ類にとって理想的な飼育環境です。
センターでは、オオサンショウウオの他に、カスミサンショウウオ、アカハライモリ、オキナワシリケンイモリ、イベリアトゲイモリ、ムハンフトイモリ、ウーパールーパーを飼育していました。どの種も広い水槽と渓谷の水で生き生きと暮らしていました。
日本サンショウウオセンターは、関西・中部圏以外からは行きにくい場所にありますが、オオサンショウウオの展示では、他の追随を許さない厚みがあります。また、良い環境で飼育されている有尾類の様子には、飼育のヒントが一杯隠れています。赤目四十八滝の観光とあわせて、赤目温泉に泊まりで行かれてはいかがでしょうか。