アカハライモリの飼育に陸場は必要か~プロの飼い方あれこれ~

初心者におすすめの爬虫類両生類として、よく名前が挙がるアカハライモリ。手のひらサイズの大きさで、丈夫で飼いやすいとなれば、人気が出るのも当たり前。

上野動物園のアカハライモリ

そんなアカハライモリの展示を動物園や水族館で見ていると、飼育ケージのレイアウトに2つのパターンがあることに気づきました。

・陸場をほとんど設けない、魚を飼育するような水槽(アクアリウム)

・陸場と水場を設けた、半水棲カエルやサンショウウオを飼育するようなケージ(アクアテラリウム)

それぞれのメリット・デメリットを検討しつつ、 アカハライモリの飼育方法全般についても考えてみたいと思います。

アクアリウムで飼うアカハライモリ(陸場をほとんど設けないケース)

まずは、アクアリウムタイプの代表格として、上野動物園の両生爬虫類館の飼育環境を見てみます。上野動物園は同じ場所でサンショウウオ類を何種類か展示していますが、アカハライモリのケージはサンショウウオ類とは違い、陸場をほとんど設けない形式となっていました。

上野動物園のアカハライモリ飼育ケージ

水槽のなかは、日本淡水魚を飼育するようなレイアウト。底砂は、小石交じりの角がとれた丸い砂利で、ところどころに岩を配しています。水草は、ネジレモ(スクリューバネスネリア)、ウイローモスが少しずつ。大きな流木を置き、先端が水面に届くような形としています。

広々とした水中にあって、アカハライモリの動きも活発。水槽内を縦横に動き回っています。

水槽内に上陸できるような広い場所はありませんが、奥の流木の突端あたりに浮いた状態で休んでいる個体がいました。

水面近くに浮いて休むアカハライモリ

同じくアクアリウムタイプのレイアウトを採用していたのが、井の頭自然文化園水生物館

ここは、水槽の中にアナカリスやキクモなどの水草を茂らせていました。また、右奥に擬岩があり、その上に面積は狭いながらも浅くなっている場所があります。擬岩の先端は水面から出ていて、わずかながらですが完全な陸場も用意されていました。

井の頭自然文化園水生物館のケージ

水中にいるアカハライモリは、上野と同じくよく動き回っています。長く見ていると、息継ぎのためにときどき水面にあがってきます。

陸場に上陸する個体はいませんでしたが、浅くなっている場所や、水草の上に止まっている個体がいました。

浅い場所で休むアカハライモリ

アクアテラリウムで飼うアカハライモリ(陸場がそれなりに設けられているケース)

岐阜県の淡水魚水族館、アクア・トトぎふ。数種類のサンショウウオ類を飼育し繁殖にも成功するなど、日本産両生類の展示に力をいれるこの水族館のアカハライモリは、陸場を設けたケージにいました。

モリアオガエルとアカハライモリの水槽

同居しているカエルはモリアオガエル。キャプションによれば、「モリアオガエルの卵嚢から落ちるオタマジャクシを食べに集まるアカハライモリ」を表現しているとのこと。陸場は、アカハライモリでなくモリアオガエルのためのものかもしれません。

丸い砂利が敷かれた水槽の水深は、5センチちょっとといったところ。陸場は全体の3分の1ほどで、擬岩に流木が添えられています。擬岩の上には植物が植えてありました。

アクアトト・ぎふのアカハライモリ

一匹のアカハライモリが、陸場に登っています。陸場があるアカハライモリのケージは珍しくありませんが、実際に陸場にあがったアカハライモリを見たのは、このシーンだけ。

陸場にあがるアカハライモリ

続いてのアクアテラリウムタイプは、イモリ類の展示点数が日本トップクラスと思われる、東山動物園自然動物館のアカハライモリ飼育ケージ。

陸場の面積は、全体の4,5分の1といったところ。底砂・床材は、水場にも陸場にも大磯砂が使われています。

東山動物園のアカハライモリ飼育ケージ

水場は、深さ10センチほど。造りつけの配管のシャワー状出口から、水が注がれています。水中に植えられ水上葉を展開する植物が一本、ウイローモスを着生させた流木が一つ。

陸場は、岩で大磯を囲う形で作られています。一部はコケが生えたエリアとなっていて、植物も植えらています。

イモリはすべて水中にいて、陸にあがっている個体はいませんでした。

飼育の参考書における記載

プロの飼育例にはアクアリウムタイプ・アクアテラリウムタイプの両方がありましたが、飼育の参考書ではどのように解説されているのでしょうか。

普段参照する飼育本の中でもっともアクアリウム寄りの記載だったのは、冨水明著「爬虫両生類の上手な飼い方」。以下、引用すると・・・

ほぼ魚を飼うような感覚で問題ない。一応、流木などで陸場を作ってやると良いが、水中に水草などがあり、そこで休める場合には上陸しない個体も多い。同じように水中にいるカメなどとの大きな違いは、やはり皮膚から水を飲んでいる点であろう。カメは水が汚れたら「飲まない」という選択ができる(ゆえに水の中にいるのに脱水症状を起こすことがある)。しかし両生類の場合は、黙っていても吸収してしまう。すなわち水質の悪化に、より敏感であるということだ。まめに水換えをする必要があるのだが、その際の水も観賞魚用の水質調整剤を入れたものを使うのが望ましい。もちろん温度も調整する。面倒な場合はペットボトルやバケツに水を汲んでおき、イモリを飼育している場所において、同じ温度にしておくことだ。数日置いておけば水質調整剤を使う必要もなくなる。

とあり、水換え・水合わせなど、まさに魚を飼うときのような注意事項が並びます。

水草の上で休む井の頭自然文化園のイモリ

千石正一著「爬虫両生類飼育図鑑」には、

水深20センチほどのアクアリウムで、発砲スチロール等の浮き島、流木、岩等で陸場をこしらえるか、アクアテラリウムで飼育する。陸場に植物はなくともよいが、水場にはマツモ等の水草がある方が望ましい。光は植物のために必要なだけである。フィルターはかけるほうがいいが、きれいに見えて水質が悪化しているのがわからないことがあるから、水換えに留意する。水温は20℃前後が適当だが、4~25℃の範囲では別に温度調整の必要はない。つまり夏に強い光に当てず、冬に凍らさなければ、外温のままでよい。冬眠させるなら5~10℃を維持する。ミミズ・イトミミズ・赤虫等の小動物の他に小さな肉片も食べる。

とあり、これもややアクアリウム寄りの印象。

一方、「Q&Aマニュアル爬虫両生類飼育入門」には、

普段は水の中で暮らしているが、繁殖期末期になると陸に上がってくる。

ビバリウムのサイズ・・・90×30×30センチに6頭。床材・・・陸場:表面に苔を敷いたローム土。水場:底にアクアリウム用の砂利を敷く。居住環境・・・ビバリウムの内部を仕切って、水深10㎝の水場をつくり、水生植物を植える。陸場の植物は必ずしも必要ないが、コルクバーグの隠れ家は置く。

とあり、陸場を設けるよう記載しています。

野生では、どのような場所で暮らしているのか

アカハライモリの野生での生活史については、大谷勉著「日本の爬虫類両生類飼育図鑑」が参考になります。

いわく、

低地から山地の池や沼、水田、湿地の水溜りなどの止水域に多く生息するが、河川脇の水草の多い緩やかな流れのよどみなどでも見かけられる。主に水中生活者だが、コケや藻類などの生えた湿度の多い場所に上がることもある。雨天時には陸上を移動する個体も見かける。

(サイト注:幼生について)変態・上陸は夏から秋で、性成熟するまで陸上生活を行い、小さな無脊椎生物を捕食し、成長する。

実際に野生で見かけた時の様子について、詳しくは野生のアカハライモリを尾瀬でみるという記事にまとめてありますが、以下に写真と動画のみを載せます。

尾瀬の木道からみた野生のアカハライモリ
息継ぎのためにときどき水面にあがり、また潜っていく
島根県の神社の池で泳ぐアカハライモリ

アカハライモリの飼育ケージまとめ

最後に、アクアリウムタイプ・アクアテラリウムタイプそれぞれのメリットをまとめてみました。

アクアリウムタイプのメリット

・アカハライモリは、水中での活動がメイン。アクアリウムで飼う方が実質的な広さが確保できる。また、活発に泳ぐ様子を見ることができる。

・(水換えはきちっとやるにせよ)水量が多い方が水質は悪化しにくい。

・休憩場所や隠れ場所となり、繁殖時には卵が産みつけられる水草を入れる場合、水量が必要。

アクアテラリウムタイプのメリット

・アカハライモリは、繁殖・幼体時には陸上で過ごすし、陸上に上がる場合もあり、生涯完全水棲種ではない。

・ケージの持ち運びなどの関係でアクアリウムにすると頻繁に水替えができない場合、水量の少ないアクアテラリウムで頻繁に水換えをするが水質を保てる

アクアリウムタイプ、アクアテラリウムタイプは、どちらか一方を選ぶというよりかは、レイアウトを作る上での参考概念として捉えて、両方の長所を出来る限り取り入れたいもの。

・浮き島・流木の先端など、狭くても上陸できる場所を用意したアクアリウム

・水場の割合・水深をそれなりに(泳げるレベルで)とったアクアテラリウム

のように、それぞれのメリットを意識しながらレイアウトを作っていけば、良い飼育環境が用意できそうです。

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