プロから学ぶアオダイショウの飼育環境

アオダイショウは、日本のヘビの代表種。動物園や水族館でもよく飼育されています。これまで、いろいろな施設でアオダイショウを見てきましたが、多くの場所で次のような解説がされていました。

足立区生物園のアオダイショウ

・日本で最も一般的に見られるヘビで、日本固有種

・木登りがうまい

・人家近くに住む

・ネズミを食べる(から、守り神とされてきた/大事にされてきた)

また、いくつかの飼育の専門書を読むと、よく書かれている事項があります。

・温和な性格

・飼いやすい

私たちにとって最も身近に住むヘビが、温和で飼いやすいとは、なんて素晴らしいことでしょうか。

このページでは、このアオダイショウについて、ところどころで飼育書を参照しながら、厳選した5か所の施設での飼育環境を紹介します。

札幌市円山動物園のアオダイショウ飼育環境

園内で捕獲された美しい青色のアオダイショウを動物園で繁殖させ、大切に飼ってきたという円山動物園。美しい個体が一匹、下のような環境で展示されていました。

アオダイショウは、左側壁面の中間棚の上にいる。その美しさは実際に訪問してじっくりご覧を。

自然光を取り入れたケージには、Y字型の木の枝が配されています。壁は擬岩風で凹凸がつけてあり、中間棚のような体を置けるスペースが2,3カ所。アオダイショウは、この中間棚の上で休んでいました。

床面は、湿った細かい砂利のスペースが手前側に、擬岩と乾いた細かい砂利のスペースが奥側にあります。奥側には、植物が一株。水入れは、体が入る大きさの造りつけのものがひとつ設置されていました。

訪問時には、写真のようなわかりやすくためになる資料があった。

アオダイショウの飼育スペースにあるとよい登り木や中間台

円山動物園のケージにあった中間棚ですが、飼育の参考書でもおすすめの設備のようです。千石正一著「爬虫両生類飼育図鑑」のアオダイショウの項には、

・ケージにはハイドボックスと水容器、止まり木の枝を入れる。高い位置に棚を設けて止まり木の代用としてもよい。

大谷勉著「日本の爬虫類・両生類飼育図鑑」には、

・アオダイショウ・サキシマスジオ・アカマタは樹上にもよく登る。飼育ケージは高さをとって、立体的にヘビの動きを観察できる方式のほうが飼育の楽しみにも繋がる。飼育ケージに高さがあることで、中間台を設けることもできる。

とあり、その存在に触れられています。ケージに中間台的なスペースを設けた施設は、円山動物園のほかにも、アクアトト・ぎふや登別マリンパークニクス陸族館など多くの場所でみられました。登り木は、設置していない施設の方が稀でした。

木に登り、水に入る。動きまわる仙台市八木山動物公園のアオダイショウ

東北地方における爬虫類関係施設の雄・仙台市八木山動物公園では、アオダイショウを複数飼いしていました。

八木山動物公園の飼育環境

ケージには、複数の木の枝を組み合わせてつくった登り木がはいっています。アオダイショウはこの登り木をよく利用し、絡んだり巻き付いたりと元気良く動きまわっていました。

ケージの手前側には、大きな浅い水場。アオダイショウは泳ぎがうまく、水辺でもよく見かけるヘビです。この日も、何匹かが水場に入るシーンがみられました。

床面は岩組みで区切られ、水場のほか、コンクリートのままの部分、直径1センチくらいの乾いた砂利を敷き詰めた部分、湿らせたミズゴケを敷き詰めた部分からなります。砂利の部分には人工植物が植えられ、アクセントとなっていました。

八木山動物公園アオダイショウケージ内部

キャプションには、

日本ではよく見かけるヘビ。木の上によく登る。垂直のかべでも、登ることができる。秘密はおなかにある角ばったウロコで、小さなデコボコにも引っかかり、体を支えることができる。家の中に入りこみ、ネズミを食べることから守り神として扱われている。電線に登ることもあるため、「ヘビ返し」が設置されることもある。

とありました。

幼体も展示・上野動物園のアオダイショウ飼育レイアウト

世界の爬虫類両生類だけでなく、関東近辺の爬虫類両生類も飼育する上野動物園。アオダイショウは、成体が一匹、孵化した幼体が一匹展示されていました。

ケージのレイアウト構成のうち、登れる木の枝、体が入る大きさの水入れの2つは基本形。このほかに、岩がひとつと鉢に植えられたシダ植物が置かれています。

床材は、乾いた小粒の赤玉土の上に、乾いたヤシガラをのせていました。ヤシガラは下の赤玉土がほとんど見えないくらい全面に敷きつめられています。

ケージのなかには、幼体を飼育する水槽があります。幼体の水槽には、小さいながらも木の枝と体の入る大きさの水入れがはいっています。床材は、湿らせた水苔。水槽の上にはピッタリサイズの網の蓋が被せられ、重しのレンガがしっかりとのせられていました。

上野動物園のアオダイショウ幼体のケージ

キャプションには、次のように書かれていました。

細長い体を上手に使ってするすると木に登る、木登りが得意なヘビだよ。その姿が苦手な人もいるけれど、ときには人家の屋根裏などに登り、穀物や家を荒らすネズミを食べることから、家の守り神として大切にされることもあるんだ。人がたくさんいる都市にもくらしており、昔から人と一緒にくらしてきた、日本人にとって身近な動物のひとつなんだよ。

ネズミだけでないアオダイショウのエサ

ここまでみてきたとおり、アオダイショウの説明では、「ネズミを食べる」ということがよく言われます。人とのかかわりのなかで、害獣であるネズミを食べてくれるという特徴は印象にのこるからでしょう。

ただ、アオダイショウはネズミ食オンリーのヘビではありません。各施設の説明文や飼育参考書の書きぶりをみると、家屋の戸袋に巣をつくるスズメをエサにしたり、木登り能力をいかして樹上の鳥の巣をおそったりと、鳥類とその卵もよく食べていることがわかります。

大谷勉著「日本の爬虫類・両生類飼育図鑑」では、アオダイショウの餌について

・幼体時はカエル類やトカゲ類を好み、成長するに従い、鳥類や小型哺乳類を主に捕食する。飼育下ではマウス、ラット、ヒナウズラ、ヒヨコ、鶏肉、鶏手羽、鶏ハツなどが餌となる。

・多種類の餌を食べるようにしておく

と書かれています。

なお、千石正一著「爬虫両生類飼育図鑑」および大谷勉著「日本の爬虫類・両生類飼育図鑑」には、アオダイショウの餌の種類や給餌方法について多くの参考になる記載がされています。実際の飼育にあたっては、ご一読をお勧めします。

天然記念物アオダイショウを1000匹まで増やした白蛇資料館の屋外飼育場

広島県岩国市には、天然記念物に指定されている白いアオダイショウの地域個体がいます。その貴重なアオダイショウを長年(約50年)継続して飼育・繁殖させているのが、岩国白蛇保存会。コンスタントに1000匹ほどを飼育しているようです。

詳細は別記事にまとめているので割愛しますが、ここの屋外飼育は、まさに野生での生息環境を再現した理想形。

白蛇資料館の屋外飼育場

野外にある飼育スペースは、四方と天井を目の細かい網で囲ったもの。よしずを立てかけて調整はしていますが、雨風・日光が入る形態です。

飼育スペース内の地面は、田畑のあぜ道や田舎の道端のような感じの草地となっています。石垣のような石積みや、木造の小さな祠も用意されていて、手前には小さな池があります。

こちらの施設には屋内にも展示場があり、広いスペースで複数飼育をしています。目の粗い白い砂を敷きつめた飼育スペースには、以下のアイテムがいれられていました。

白蛇資料館のシロヘビたち

・全体が洗濯物干しサイズの、太い木の枝の登り木。石灯籠

・丸太の台

・植物の鉢植え

・水入れ。バットや植木鉢の受け皿(鉢受皿)のようなものを使用

・草地の代わりの、タマリュウ・リュウノヒゲを植えた苗床・プランター

タマリュウを植えた苗床は、アオダイショウお気に入りの場所のようでした。タマリュウやリュウノヒゲは日陰に強い植物ですので、面積に余裕があるケージの場合、草地代わりに入れてみるとよいかもしれません。

初心者向け現実的飼育セット、足立区生物園のアオダイショウ飼育ケージ

ここまで、4つの施設の飼育環境をみてきました。ただ、見てきた施設並みの飼育環境を個人で用意するのは、少し大変です。

そこで、最後にどの施設にも共通してあった必須のレイアウト構成をコンパクトにまとめたケージをご紹介します。足立区生物園のケージです。

足立区生物園のアオダイショウ飼育ケージ

必須のレイアウト構成とは、①脱走できないしっかりしたケージ、②登り木、③水入れ。

③の水入れは、乾燥防止のほか、脱皮前に全身を浸すことがあるため、体が入る充分な大きさであることが必須です。

登り木の根元がシェルター代わりになっていた

アオダイショウは、日本の人家近くで最も一般的に見られるうえ、

・日本産種なので温湿度管理が容易

・昼行性で鑑賞に向く

・温和な性格で飼育しやすい

など、飼育向きの点がたくさんあるヘビです。設備と餌をしっかり準備して、その魅力を楽しんでみたいですね。

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