東京都内(奥多摩方面や島嶼地域でない市部)は、開発が進み人工物で覆われた、野生生物にとっては住みにくいところ。爬虫類両生類も、少なくとも私の住む地域では、アズマヒキガエルやニホンヤモリ、ミシシッピアカミミガメやニホンカナヘビなど、一部の都市部にうまく適応している種類以外を日常的に見かけることは難しくなってきています。アオダイショウ、ヒバカリ、ニホントカゲ、ニホンスッポンなどはまだまだ出会う機会もありますが、水田や湿地帯など水場を必要とする種類は、本当に見かけることが少なくなりました。
ただ、東京の市部からこういった爬虫類両生類が全く消え去ったのかといえば、そんなことはないはず。いるところにはいる、あたりをつけて探せばいるものです。そこで、爬虫類両生類が活発に活動しはじめる5月の上旬に、いそうな場所にあたりをつけて行ってみることにしました。
その「いそうな場所」ですが、今回は自然な水場と雑木林などが隣接している谷戸地形の場所を選びました。
谷戸とは、小高い丘や台地の麓にある、切り込まれて谷になったような地形を指す言葉。高低差がある土地ではよくみられることですが、地形に沿って水が流れ込んでいたり湧水があったりすることが多く、水が豊かで自然に囲まれた生き物にとって暮らしやすい場所です。
今回行ってみたのは、都内にいくつか残されている谷戸群のうちの一つ。そこには、ひとつの丘陵地の麓にいくつかの谷戸があります。地図を見ながら、水場がある谷戸ををピックアップして回ることにしました。
最初に行った谷戸は、谷間の先端の部分に池(おそらく湧水)があり、そこから水が流れ出しているかたち。池は、広葉樹が水面上に張り出していて、季節になればいかにもモリアオガエルが産卵に来そうな雰囲気です。
池から流れだす小川には、ヒキガエルのオタマジャクシが群れをなしています。例によって、アカミミガメもいました。
尾根をのぼって、次の谷戸まで移動します。ここは、田んぼと湿地帯がある最も有望な谷戸。田んぼは代掻きが終わって田植え前の状態でした。畔をあるいていると、カエルの鳴き声があちこちから聞こえてきます。声の主を探すのですが、見当たらず。
田んぼエリアをあとに、奥の湿地帯方面へと進みます。このあたりでウシガエルの鳴き声が聞こえましたが、姿はみえません。
すこし進んだ時に、初めてカエルらしきものを見つけました。
アカガエルです。
本州に住むアカガエルには、ニホンアカガエルとヤマアカガエルがいます。見分け方は、背中を通る二本の線がまっすぐなのがニホンアカガエル、肩のあたりで曲がるのがヤマアカガエルだそうです。
また、ヤマアカガエルは顎の縁に、黒い斑点があるとのこと。
同じカエルを陸で撮った写真で見ると、背中の線はわりとまっすぐに見えます。横からの写真をみても、顎に黒い斑点はありません。このカエルは、ニホンアカガエルである可能性が高いと思います。
同じ場所には、オタマジャクシが沢山いました。オタマジャクシとともに、他の生き物の幼生と思われるものや、エビもいます。すぐ近くに林があるので、生物相が豊かです。
さて、このあと周りの林の中を散策して戻る途中、畦道でヒバカリを見かけました。
茂みの上で日光浴をしていたものの、通りかかるとすぐに茂みのなかへ。写真は撮れませんでしたが、黒みが強く、太さが散水ホースくらいある、ヒバカリとしては大きい個体でした。
今回行った場所は、東京の市部。アカガエルやヒバカリといった都市部からいなくなった種類も、すこし歩いただけで見かけることが出来ました。やはり、里山の風景が残っているところは生物相が豊かですね。
数少なくなった、東京都内のこのような場所・このような場所の爬虫類両生類、しっかり守っていきたいと思いました。
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