プロがつくるボールパイソンの飼育ケージレイアウト3選

ボールパイソンは、いわゆる「外国産の大蛇」の見た目をもつヘビ。実際、世界最大のヘビ・アミメニシキヘビと同じニシキヘビ科に属し、ボールニシキヘビとも呼ばれます。

沖縄こどもの国のボールパイソン

ニシキヘビ科のヘビは巨大な種が多く、前述のアミメニシキヘビは最大10メートルにもなり、シカやヒョウを飲み込むこともあります。一方、ボールパイソンは150センチとアオダイショウと同じサイズ。

ただ、太さが同じ1~2メートル位のヘビとは比べものにならないほど太く、がっしりした体格をしているため、大蛇の風格があります。姿かたちは、世界最大のヘビ・アミメニシキヘビをはじめとする大型ニシキヘビ類そのものの雰囲気。

おきなわワールドのアミメニシキヘビ

今回は、そんなボールニシキヘビを、他の大型ニシキヘビ含め種々のヘビを飼育する専門施設がどのように飼育しているのか、ご紹介します。

文献にみるボールパイソンの飼育ケージレイアウト

専門施設での飼育環境を見る前に、名高い飼育書でボールパイソンについての記載を確認します。

「Q&Aマニュアル爬虫両生類飼育入門」には、ボールニシキヘビの飼育について次のように記載されています。

ビバリウム:90×38×45センチ。木登りと日光浴用に、水平および傾斜のある枝類。プラスチック製の植物。隠れ家は地上にひとつ、樹上にひとつ。水を入れたボウル。繁殖期には軽く水を吹きかける。

気温:低温部で29.5度、ホットスポットで35度、夜間は24~26.5度。光周期:14時間。湿度60%。

床材:交換や掃除が簡単な新聞紙、カーペットタイプの素材。

千石正一著「爬虫両生類飼育図鑑」には、

シェルターと木登り用の枝を設けたテラリウムがよい。気温は日中24~30度、夜間はそれより2~5度以内で下げる。

とあります。

天王寺動物園のボールパイソン

冨水明、海老沼剛著「爬虫両生類の上手な飼い方」には、

ケージ:一般的に地表での活動しかしないと思われがちなボールも、木を入れてやると意外によく登る。これは便秘解消にもつながるので、できればレイアウトくらいはしてやった方が良い。

気温:ケージ内には必ず35度程度の場所を設け、給餌後にゆっくりと体を暖められるようにする。ボアやパイソンの場合、空気を暖めることが重要である。そこで、上写真の(※)ケージの蓋につけるタイプのヒーターは重宝する。さらに腹筋を冷やさないために床面から遠赤外線ヒーターを用いるのが良い。

床材:ウッドシェイブやウッドチップを使うが、キッチンペーパーなどでも問題ない。

水容器:通常は全身が入れるものを用いるが、~中略〜個体が大きくなったら、水容器は小さめのものにしてかまわない。

とありました。

なお、この「爬虫両生類の上手な飼い方」では、ボールパイソンの飼育下での繁殖の流れについて写真付きで解説しています。繁殖を狙う場合必見です。

餌については、いずれの文献もマウスを挙げ、季節拒食についての記載がありました。

東山動物園のボールパイソン飼育ケージレイアウト

飼育参考書の知識を踏まえたうえで、プロによる実際の飼育例を見てみます。

最初にご紹介するのは、ボア・ニシキヘビといった無毒のヘビを多数飼育する東山動物園自然動物館での飼育環境。まず見ていただきたいのは、ここのボールパイソンの大きさ。

東山動物園のボールパイソン

個体によっては、または飼育環境によってはここまで大きくなるんですね。臆病な性質で、かつ人間に危害を与えるレベルの大きさではありませんが、こんなヘビが万が一逃げ出したら大変なことになります。ボールパイソン飼育者がケージをつくる上でまず考えるべきは、逃げられないしっかりしたケージで飼うということ。見た目の体格通り、力のあるヘビだということも考えた上で設備を整えるべきです。

ボア・パイソン類でかつてペットとして流通していたボアコンストリクターや、同じニシキヘビ科のインドニシキヘビは、法律で「特定動物」に指定されています。特定動物に指定されたものは、一定のレベルの飼育設備を整えた上で許可を得ないと飼育できません。東山動物園のボールニシキヘビのすくそばのスペースには、特定動物のヘビが何種類も飼育されていますが、ボールパイソンはこれらのヘビの小型版。ケージの質や管理には万全を期したいものです。

さて、ケージがしっかりした造りであることを前提に、ケージ中のレイアウトを見てみます。

枝の上で丸くなるボールパイソン

東山動物園のケージはかなり広く、手前側に乾いた砂の部分が、奥側に造りつけの床の部分があります。手前側には登れるように木の枝が配され、奥側には体が入る大きさの水場が用意されています。

木の枝は、他の種類のヘビのケージと比べて、大規模かつ複雑なものが組まれていました。何本もの枝を用意し、互いに絡みあう部分・水平な部分を設けて使いやすくしています。枝組みはボールパイソンが居場所とすることを前提に、来園者から見やすいケージ前方のガラス面前に配されています。

ボールパイソンを広いスペースで飼うメリットは?

さて、ここまでの写真をみると、東山動物園はボールパイソンをかなり広いケージで飼育していることがわかります。一般的に飼育に広い場所を必要としないといわれるヘビですが、広いスペースで飼うことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ひとつ挙げられるのは、ケージ内に温度勾配をつくれるという点です。

パイソン類は、餌としてマウスなどの哺乳類を丸呑みします。その消化を助けるため、高温の場所をケージ内に用意することが必要です。ただ、ケージ内全体が高温になってしまうと、生体の逃げ場がありません。爬虫類両生類は、低温にはある程度の時間耐えられます。一方、高温は一発で致命傷になります。

ケージが広ければ、高温部と低温部を設けることができますし、ボールパイソンの居場所によって適温がわかるようになります。温度勾配は、高さがあるケージで上下の動きが可能な場合、高低でつけることも出来ます。

東山動物園のケージは、広い上に、木の枝を張り巡らせることにより上下にも動ける環境となっています。個人がこれだけの環境を用意するのは難しいかもしれませんが、理想形として記憶にとどめたいレイアウトだと思いました。

タイ赤十字協会スネーク・ファームのボールパイソン飼育ケージ

タイ赤十字協会スネークファームは、毒蛇血清の研究等をおこなう施設のヘビ飼育場。位置付けとしてはジャパンスネークセンターに似ていますが、こちらはバンコク中心部に立地するきれいで整った施設です。

ボールパイソンが飼育されていたのは、屋根付き屋外にあったこのケージ。

スネーク・ファームのボールパイソン

乾いた砂が薄く敷かれた床に、シェルターとして木の切り株(枝分かれした部分?)が入れられています。水場は造りつけのもので、体が入る広さですが深さは浅め。水道の出口と排水口が直結されていました。

タイ赤十字協会のボールパイソン

沖縄こどもの国のボールパイソン飼育ケージレイアウト

名前から受ける印象と違ってなかなか本格的な展示内容の、沖縄こどもの国の爬虫類館。ここの飼育ケージは全般的に木の枝組みがとても上手いのですが、ボールパイソンのケージも下のような立体的なつくり。

沖縄こどもの国のボールパイソン飼育ケージ(枝組み)

ボールパイソンは、枝組みの上部の方で丸くなっています。「ニューワイド学研の図鑑 爬虫類・両生類」のボールパイソンの項には、「樹上でも地表でも活動し」とあるので、木登りはできるはず。

爬虫両生類の上手な飼い方」は、ボールパイソンのレイアウトに木の枝を入れた方が良い理由について、便秘を防ぐ効果を挙げています。ボールパイソンを狭いケージで飼って運動不足のままにしておくと、腹筋が弱まり便秘になりやすくなります。便秘は、食欲減退のもと。木の枝をいれて立体活動ができるようにすれば、便秘解消に役立ちます。

木の枝を入れるもう一つのメリットは、体温調節。ケージに上の写真くらいの余裕があれば、ボールパイソンがケージ内を移動し、上部や底面のヒーターとの距離を変えることにより、温度調整ができます。

ケージの底面

ケージの底面は、乾いた土やヤシガラなどが混ざった床材が敷かれ、乾燥した状態になっていました。水入れは、体が浸かる大きさの深い造りつけの水入れ。ケージ全体の雰囲気は、下の写真のような感じです。

ボールパイソンの飼育ケージレイアウトで注意すべきこと

最後に、ボールパイソンの飼育ケージで注意すべきことをまとめてみます。

・温度管理が重要。ケージ内の温度勾配を意識する

・木の枝を配し、立体的な活動ができるようにする

・逃げ出さないよう、しっかりした設備で飼育する

ボールパイソンは、「餌・ケージ・飼い方」で紹介する種類の中では比較的飼いにくい種類。前述の飼育書でも、人気があるものの初心者向けではないというニュアンスでした。拒食の問題や、高温を維持する設備の必要性なども考慮すると、飼育には知識面・金銭面である程度のレベルが要求されそうです。決して気軽に飼えるヘビではありませんが、万全の設備のもとで魅力を楽しんでみたいものです。

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