広島県広島市は、中国・四国地方が誇る百万都市。人口規模はさいたま市と仙台市の間で、全国的にみても有数の都市です。その広島市の郊外に、しっかりとした爬虫類飼育設備をもつ動物園があります。日本動物園水族館協会の繁殖賞の常連、安佐動物公園です。
安佐動物公園への行き方、アクセス
安佐動物公園は、広島市中心部から約1時間の立地。広島駅前や紙屋町から一本で行けるバスがあるほか、市街中心部からアストムラインで上安駅までいき、上安駅からのバスに乗り継いでいく方法があります。
立地が広島市中心部から少し離れているだけに、周辺は自然豊かな環境。動物園の各飼育施設は、山や林が広がるなかに、ゆったりしたスペースをとってつくられています。
入口をはいって、高低差を楽しみながら園路をすすんでいくと、見晴らしのいい場所に平屋の建物がたっているのが見えてきます。リクガメ舎です。
リクガメが地面を広々と動き回るリクガメ舎
建物に入ると、左手にインドホシガメの飼育場がありました。面積は、リビングルームサイズで申し分なし。幼体のために区切られた一画もあります。床は、地面をそのまま利用するような形で、土となっています。
隣にはアカアシガメの区間があり、生体がうじゃうじゃいました。繁殖も盛んなようで、卵が何個か展示されています。さらにその隣には、エロンガータリクガメのスペースもあります。いずれも、地面で暮らすリクガメの姿を、上から眺めることができる展示方法です。
奥には、アルダブラゾウガメやビルマムツアシガメ、ケヅメリクガメ・ヒョウモンリクガメといった大型リクガメが広々と動き回れる大きさの飼育場があり、広い水場が備え付けられていました。同じスペースに、ホウシャガメもいます。
屋内飼育場に隣接して屋外にも、広々とした飼育スペースが設けられています。ここは、大地を動き回る大型リクガメを開放的な環境で見られる貴重な場所。こういう場所は、そうそうありません。
爬虫類館をはいると、いきなりニホントカゲ
続いて、園路をたどっていくと見えてくる古めかしい建物が、はちゅうるい館。はちゅうるい館と名前がつくものの、夜行性動物の展示スペースと爬虫類の展示スペースを兼ねた建物です。展示の規模はそれぞれ半々ずつで、爬虫類コーナーは夜行性動物コーナーを抜けた後にあります。
爬虫類コーナーに入ってまず現れるのが、ニホントカゲ。その後、アオダイショウ、ニホンマムシという顔ぶれが続きます。普通の爬虫類展示施設では、日本産種が順路最後のコーナーでおまけのように展示されていることが多いのですが、ここは逆。ニホントカゲもアオダイショウもニホンマムシも、飼育個体は1匹ですが、しっかりと整えられた環境での丁寧な展示です。
日本には尖閣諸島と対馬にしかいないというアカマダラ。よく、シロマダラが幻のヘビとしてニュース等でとりあげられていますが、赤マダラはそれ以上に見かける機会がありません。ヒバカリくらいの大きさの可愛らしい姿は、必見です。
爬虫類館ではこのほかに、
- ニューギニアナガクビガメ
- チリメンナガクビガメ
- ビルマニシキヘビ
- マレーハコガメ
- ヨーロッパアシナシトカゲ
- ヒガシアオジタトカゲ
- アルマジロトカゲ
- ボールニシキヘビ
- ボアコンストリクター
- ケニアスナボア
- コロンビアレインボーボア
- ニシアフリカコガタワニ
といった種類が飼育・展示されていました。
順路の最後の方には、目玉展示として、オオサンショウウオがすむ河川を再現した大水槽があります。
キャプションには、「里山の河川に生息。夜行性で、昼間は巣穴や岩の下に隠れている。流れの下で待ち伏せし、魚やカニを丸呑みにする。」とあります。
この大水槽では、オオサンショウウオが土管の内に潜んでいる様子を見ることができました。動物が感じにくい赤色光で内部を照らし、昼間に巣穴に隠れるオオサンショウウオの姿を展示する。人の手が加わった、日本の普通の田舎で生きるオオサンショウウオを展示する。工夫された見事なレイアウトだと思いました。
安佐動物公園は、広島市中心部から少し離れた、豊かな自然の中にある動物園。園内には、ダルマガエルの生息池やモリアオガエルの繁殖池があり、クマも現れるといいます。
生体数、生体の種類数がものすごく多いわけではありませんが(アカアシガメ、ホシガメの生体はたくさんいます)、西日本有数の施設であることは間違いありません。スペースの関係で押し出された感のある生き物もなく、どれも手抜きがない感じの展示です。
豊かな自然環境を満喫しながら爬虫類の展示を楽しむには、とてもおすすめの場所でした。