シリケンイモリの飼育方法

日本には、3種類のイモリがいます。

  • アカハライモリ(ニホンイモリ)
  • イボイモリ
  • シリケンイモリ
沖縄こどもの国のシリケンイモリ

アカハライモリの飼育方法は、すでに取り上げました。イボイモリは、天然記念物ですから許可をうけたもの以外は飼育できません。残るシリケンイモリとは・・・沖縄・奄美ではすごくポピュラーなイモリですのでご紹介します。

文献にみるシリケンイモリの特徴

シリケンイモリとはどのようなイモリなのか、まずはその特徴・生態について詳しい文献の記載を引用します。

東山動植物園のシリケンイモリ

「ニューワイド学研の図鑑 爬虫類・両生類」をみると、

  • 体の大きさ:全長10~18cm
  • 日本での分布:奄美大島とその周辺の島、沖縄本島、渡嘉敷島など
  • 主な特ちょう:平地にも山地にも生息し、森林の林の下から草むらの水たまり、側溝などさまざまな場所に見られます。陸上で活動している個体も多く見られます。

とあります。アカハライモリについては、

  • 全長7~14cm
  • 水田や小川、池、沼、渓流付近の水たまりなどにすみ、水生生活をします。

とありますので、アカハライモリよりやや大きく、陸に上がる傾向が強いイモリということがわかります。

陸地に上がった東山動物園のシリケンイモリ

大谷勉著「日本の爬虫類・両生類飼育図鑑」には、

生態

奄美・沖縄諸島で最も普通に見られる種。低地から山地の水場の周辺に多く、高・低温期、繁殖期は水中に多い。それ以外の季節は湿潤な林床や日陰の草地などに拡散しているが、個体数が多く、生息条件の良い場所には多く見られる。雨天時は餌を求めて道路上や耕作地など開けた場所に数多く出没する。

陸上では昆虫の幼虫やマイマイの幼生など動きの遅い無脊椎動物、水中では小型の水棲昆虫や巻貝の幼生、イトミミズ、カエル類の卵や幼生などを捕食し、餌の少ない時期や場所では同種の幼生も捕食する。飼育下では冷凍アカムシ、ハニーワーム、コオロギの幼体など。

と書かれていました。

日本サンショウウオセンターのオキナワシリケンイモリ飼育レイアウト

続いて、専門施設での実際のシリケンイモリの飼育環境をみてみます。まずは、オオサンショウウオをはじめとする有尾類を専門に飼育する、日本サンショウウオセンターの水槽です。

日本オオサンショウウオセンターのシリケンイモリ

シリケンイモリの水槽には、厚さ5センチ強の砂利が敷かれていました。ここはオオサンショウウオがすむ渓流沿いにあり、川の水を取り込むことができる施設。配管からは、常にチョロチョロと新鮮な水が供給されています。

水深は、イモリが浸かれる程度の深さ。石を何個も配し、陸場に上がれるようにしています。なかでも大きい石2つは、ウイローモスに覆われていて、ウイローモスの上で休む個体の姿が見られました。

指先はオレンジ色

シリケンイモリとアカハライモリの見分け方

シリケンイモリの外見は、個体によるバラエティがあります。一方、アカハライモリも同じく地域や個体による変異があり、多種多様な模様をもちます。外見からこの2種を見分けるには、どうすればよいのでしょうか。

大谷勉著「日本の爬虫類・両生類飼育図鑑」には、シリケンイモリとアカハライモリの見分け方が記載されています。

  • アカハライモリとは本種の掌や指が腹面の色と同様ということ、尾の形状が異なることで区別できる。

上写真のウイローモスの上にいた個体の指先をみると、うっすらオレンジ色となっています。腹面と掌の色はというと・・・

サンショウウオセンターのシリケンイモリ

同じくオレンジ色となっていますね。このページには、他にも指先の色がはっきり確認できる写真があります。じっくりとご覧ください。

沖縄こどもの国のシリケンイモリ飼育環境

続いて、シリケンイモリの地元にある動物園、沖縄こどもの国にいたシリケンイモリを見てみます。

陸地によくあがるシリケンイモリには、立体的な陸場レイアウトが可能

沖縄こどもの国のシリケンイモリの水槽は、

  • 擬岩で出来た陸場部分が1/3
  • 大磯サイズの砂利が敷かれた陸地が1/3
  • 薄く砂利を敷いた深さ10センチ弱の水場が1/3

といった構成。陸場と水場の間に、流木も配されています。

沖縄こどもの国の水槽

なかには、陸場にあがる個体、水中を動き回る個体が両方いて、かつ出たり入ったりしています。このページの2番目の写真は、沖縄こどもの国のシリケンイモリが擬岩部分に上がろうとしている写真。かなりの急斜面でも、よじ登っていきます。

シリケンイモリは、有尾類のなかではかなり立体活動に強い印象。レイアウトをつくる際には、立体感がある構成に出来そうです。もちろん、逃亡防止策はしっかり考えておく必要があります。

リュウキュウヤマガメの池に集まるシリケンイモリ

沖縄こどもの国では、水槽に展示されていた個体以外にも、シリケンイモリが見られる場所がありました。その場所とは、リュウキュウヤマガメの飼育場。

沖縄こどもの国のリュウキュウヤマガメ飼育場
赤い矢印の先に、シリケンイモリが見える

金網で囲まれたスペースの中に、学校ビオトープのような空間が広がっています。水場部分は底が土(泥)で、広いですが水深は10センチもありません。メインの飼育動物は天然記念物リュウキュウヤマガメですが、よくみるとオキナワシリケンイモリの姿が・・・。

リュウキュウヤマガメ飼育場のシリケンイモリ

飼育場の前には、次のような文章が掲示されていました。

  • 冬はシリケンイモリの恋の季節です。ふだんは森の奥などにかくれているかれらもこの時期は水あるところへあつまります。この池の中にいるイモリはすべて野生個体です。

「野生個体」を、飼育下繁殖個体もしくは購入個体でなく野生採集個体という意味で使っているのか、人為的に捕まえたのでなく、自然に展示施設にやってきた個体という意味で使っているのか、文章からだけでは読み取れません。

ただ、飼育場の後ろが変に整備されず放置された雰囲気であることから、後者の可能性が高いと思います。そうだとすると、シリケンイモリは水場のあるビオトープをつくれば呼べるほどポピュラーで、かつ行動範囲が広い種類ということが伺えます。

都会のヒキガエルみたいですね。

奄美大島で見た野生のアマミシリケンイモリ

野生での生息環境も、見ておきましょう。下の写真は、夏の夜に、奄美大島の山の中の林道脇で撮ったもの。道路に沢水が流れないよう造作物がつくられていて、そこにできた水たまりにカエルが卵を産みにきていました。孵化したオタマジャクシもいます。

奄美大島の(おそらく)シリケンイモリ

そのカエルの卵やオタマジャクシを狙って集まってきていたのが、イモリです。イボイモリのようにゴツゴツした個体もいれば、上の写真のようにスラっとした個体もいます。スラっとした個体は、アマミシリケンイモリでしょう。

同じ奄美大島で、昼間に山の中を歩いた時には、わずかに水が滲みだしているような小さな水たまりに、シリケンイモリの幼生がいました。

レンゲですくったシリケンイモリの幼生
シリケンイモリの幼生がいた水たまり

最初に参照した文献に、シリケンイモリは「山地にも生息」するとありましたが、見かけた場所は決して開けているとはいえないような山の中。野生では斜面を動き回ったり、土の上で過ごす場面も多いのでしょう。

東山動物園のシリケンイモリ飼育水槽

最後は、イモリ類の飼育・展示点数ではおそらく日本一を誇る、東山動植物園自然動物館におけるシリケンイモリの飼育環境をご紹介します。

水槽は、水場が半分強、陸場が半分弱の構成。水場は、水深5~10センチ程度の深さで、流水が注ぎこまれています。水の注入口の直下には石を置き、強い水流が生じないよう配慮されています。シリケンイモリは数匹が飼育されていましたが、大多数が水の中にいる状況。

陸地は、水場部分とは石で区切られ、大磯砂が厚く敷かれていました。植物が何種類か植えこまれているほか、ウイローモスを着生させた石や流木を配しています。

エサは、アカムシを使用

水槽近くの掲示には、「とても食欲旺盛でエサとなる赤虫をいれるといっせいにとびつき他のイモリの足をエサとまちがえてくわえてしまうこともあります。」と書かれていました。

確かに、並んで展示されていた他種のイモリには、物陰に隠れてほとんど出てこないものやじっとしているものも多くいましたが、シリケンイモリはよく動き回る印象でした。また、この掲示から、東山動物園では餌として赤虫を与えていることが分かりました。

シリケンイモリについてのまとめ

陸にあがった東山動植物園のシリケンイモリ

シリケンイモリは、イモリの中では活発に動く種類

このページで紹介したいずれの施設でも、シリケンイモリの近くに別種のイモリが展示されていましたが、他のイモリと比べてシリケンイモリは活発な印象でした。

シリケンイモリの飼育には、水場も陸地も必要

これまで様々なところでアカハライモリを見てきましたが、基本的に水中にいることが多く、陸に上がった姿は時々しか見られませんでした。これに対し、シリケンイモリは多くは水の中にいるものの、必ず陸にあがっている個体がいました。

餌は、赤虫

野生下で食べていたのは、カエルの卵とオタマジャクシ。専門施設で与えていたのは赤虫でした。飼育下では、イモリやウーパールーパーの餌も活用できると思います。