野外で見かけるトカゲ類は、再生尾をもっていることがよくあります。再生尾とは、いったん切れた後に、生えてくる尾のこと。
尾を切る、ということは、何らかのピンチに遭遇したから行われるわけです。そして、切れた尾が再生しているということは、ピンチを切り抜けて、無事生き抜いてきた証。
今回は、愛知県の三河地方で、立派な再生尾をもつ二ホントカゲに出くわしましたのでご紹介します。
三河山中の神社でみかけた古傷を持つニホントカゲ
見かけた場所は、奥三河の山の中。とある神社です。
境内をすすみ、本殿にお参りすると・・・
賽銭箱の前に、なにか存在感を感じます。
貫禄の、古強者のようなニホントカゲです。
よく見ると、尾に噛みつかれたような古傷があります。その傷のすぐ後ろには、立派な再生尾が生えています。
色艶も、貫禄も十分な存在感あるニホントカゲ。厳しい場面をくぐり抜け、いまは悠々とくらしているように見えます。
三河の湿原で見かけた若トカゲの再生尾
おなじ三河地方で、若いトカゲの再生尾もみました。
場所は、湿原の木道の上。歩いていくと、曇天のなかで日に当たろうとするニホントカゲがいます。
きれいな青色の尾を持つ個体ですが、よく見ると・・・
尾は、再生尾でした。
再生尾とそうでないケースあれこれ
参考に、再生尾でないニホントカゲを見ておきましょう。房総半島でみたヘビ・カエル・トカゲで紹介した個体です。
再生尾でないニホンカナヘビはこちら。先ほどの再生尾の若いニホントカゲと同じ場所にいた個体です。
再生尾のニホンカナヘビはこちら。東京都内の個体です。
星野一三雄著「両生類・爬虫類のふしぎ」によると、ニホントカゲなど「スジトカゲ」類の幼体の尾が青いのは、敵に襲われた場合の自切行為を前提に、尾を目立たせるためだそうです。
また、トカゲのしっぽの骨は折れやすくなっていて、危険を感じた時に筋肉を収縮させて切り離すそうです。尻尾は再生されても骨は再生されないため、再生尾には骨がないそうです。
自分の身を守るため、自らの骨を断って敵に対抗する。再生尾を持つトカゲをみると、そんな過去をくぐり抜けてきた個体なんだと一目置いてしまいそうです。