なぜこんな場所に?離島の生物研究所、黒島研究所探訪記

黒島研究所は、沖縄県八重山諸島の小さな島・黒島にある生物研究所。牛が草を食む野原の島で、魚類や爬虫類などの生き物を飼育するユニークな施設です。名前からだとどんな施設なのかなかなか想像できませんが、実際に見学してきましたのでご紹介します。

黒島研究所の入口風景

黒島研究所への行き方、アクセス

黒島研究所のある黒島へは、石垣島からのアクセス。南ぬ島石垣空港からバスに40分ほど乗ると、石垣島中心街の石垣フェリーターミナルに着きます。

石垣フェリーターミナルからは、八重山諸島の島々への船が割と低価格・高頻度で出ていて、カウンターでチケットを買えは気軽に行くことが出来ます。石垣島と八重山諸島の島々の間の航路は、八重山観光と安栄観光というフェリー業者がサービスを競い合っているため、チケットも観光付きだったり周遊タイプだったりといろいろ工夫されています。この日は、レンタル自転車付きのフェリーチケットを購入。チケットを買うとその場で名前を聞かれ、島のレンタル自転車さんにあらかじめ連絡しておいてくれます。黒島へは、この日は船が1日5便出ていて、40分ほどで着きました。

黒島の船着き場

島へ着くと、船着き場にレンタル自転車屋さんが待っています。レンタル自転車屋さんの車に乗って、ほんの少しだけ移動。港から歩いて1分くらいのところにあるガレージで自転車を借りました。しばらく立ち話をして、自転車を漕ぎだした時には周りに人の気配が全くなし。船が港に着いた時には、乗客や迎えで10人以上人がいたのですが、あっという間にいなくなっていました。

黒島の道

人が1人もいない中、自転車でひろい野原の中のまっすぐな道を進みます。黒島は平坦な島で、人工物があまりない空間が広がっています。野原の向こうには、木立が見えます。木立のあたりまでくると、近くにビジターセンターが1軒、民宿兼食堂が1軒ある交差点がありました。その交差点を右の方に曲がって砂の道をしばらくいくと、黒島研究所にたどり着きます。

黒島研究所への交差点

ウミガメ関係の展示が興味深い黒島研究所の資料展示室

 島自体にもあまり人がいない上、集落から離れたところにある黒島研究所。どんなところだろうと思いを巡らせながら入ってみると、受付をしてくれる方が出てきました。見学料500円を払って中にはいります。

黒島研究所の受付

黒島並びに黒島研究所の規模感はこんな感じ(訪問は9月下旬)。意外といっては失礼かもしれませんが、入場者は多いようです。海外からのお客さんも多い模様で、キャプションのコメントに丁寧な英訳がつけられているのが印象的でした。

数字で見る黒島

入って左手が、資料展示室。ここで印象的だったのは、ウミガメ関係の展示。様々な種類のウミガメのはく製がズラッと並ぶ光景は他でも見ますが、日本では一年間に1・2例しか観察されないというクロウミガメの剥製を展示しているのは、この黒島研究所だけとのこと。並んでいる剥製の中にはこのほかに、アカウミガメとタイマイの雑種の剥製もありました。

クロウミガメの剥製

大きなスペースが割かれていたのが、沖縄で行われていた素潜りでのウミガメ漁「かーみーかけ」に関する展示。カーミーカケは、海人にとって危険をともなう漁だったそうです。

資料展示室では、カーミーカケ含めウミガメ関連の映像資料がいくつか視聴できるようになっていました。映像は、産卵、交尾、子ガメと光(ライトを使った実験や赤い光がウミガメに見えないという噂の検証も)、子ガメVSスナガニなど、興味深い内容。

黒島研究所の生物飼育室と屋外飼育スペース

入口入って右手方面は、生物飼育室。ウミガメを飼育するコンテナ型水槽が真ん中にあるほか、アオウミガメの子ガメや魚類・甲殻類など海の生き物たち、鳥類ではリュウキュウコノハズクが飼育されています。

地元の八重山の爬虫類・両生類関係で展示されていたのは、サキシマハブ、イシガキトカゲ、ホオグロヤモリ、サキシマヌマガエル(移入種で人工のため池に住み着いている)、サキシママダラ。

地元種イシガキトカゲは、パッと見てもニホントカゲと区別がつかないいわゆるトカゲですが、ニホントカゲでこの大きさだと、ここまで尻尾は青くないかなと感じます。

黒島研究所のイシガキトカゲ

地元種、サキシママダラ。不思議と水の中によく浸かっているとのこと。

黒島研究所のサキシママダラ

生物飼育室から外に出ると、黒島の自然のなかウミガメが泳ぐプールがあります。プールのほかにも何個か水槽があって、沢山のウミガメがいました。野外に置かれたコンテナ型の水槽というカジュアルな飼育設備に、なみなみと水が注がれ、元気に動き回っています。

黒島研究所のウミガメプール

コンテナ型ウミガメ水槽の隣になぜかいたのがケヅメリクガメ。サンゴの石垣に囲まれた、木陰の広いスペースの中で飼育されていました。ケヅメリクガメとサンゴの囲いというのは、なかなか見られない組み合わせです。

後ろに見えるのが、コンテナ型のウミガメ水槽

黒島研究所にはこの他に、資料展示室の外に外来種のインドクジャクが、屋外の池にはサメが飼育されていました。サメがいる屋外の池には、ナマコなど海の生き物もたくさん。

建物に入る前のエントランスには、ヤエヤマイシガメも。もともと川も池もない黒島にはいなかった移入種だそうですが、生活用水のため人工の池をつくり、そこに持ち込まれて定着したとのことです。

黒島研究所の謎

この黒島研究所、名前の印象もあって謎な感じがしていましたが、実際に訪問してもなお不思議。

黒島研究所の屋外で展示されていたされていたサメ

人もまばらな島の集落から離れた場所で、どのように運営されているのでしょうか。個人で運営するには生体のバリュエーションや数がちょっと多いですし、図書資料を収蔵する部屋などは都市部のオフィス顔負けのレベルできちんと整備されていて、それなりに人手がかかりそうな印象。かといって、あちこちに人がいる感じではありません。研究所の人は表にでてこないものの、キャプションのコメントなどは決して無機質でなく、人の息遣いを感じさせるユニークな内容。

謎なまま研究所を後にしましたが、そのあと入った食堂で島の方に聞いたところによると・・・

・元々名鉄(名古屋鉄道)の系列

・生物系の学生などが、島に滞在して運営にかかわっている。寮みたいなところがある。

とのことでした。

黒島研究所は、ちょっと遠いですが、それも含めて面白い施設。爬虫類両生類の宝庫である八重山方面に行かれた方は、足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

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なぜこんな場所に?離島の生物研究所、黒島研究所探訪記」への2件のフィードバック

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  2. ピンバック: ニホントカゲと何が違う?伊豆諸島のオカダトカゲ | 爬虫類両生類 餌・すみか研究所

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