天城山でみたモリアオガエルの卵塊

モリアオガエルは、日本に生息する樹上性のカエル。樹上性のカエルとは、発達した吸盤を頼りに生活の大部分を木の上ですごすカエルのことで、ツリーフロッグとも呼ばれます。ペットとしては、イエアメガエルやアカメアメガエル、ソバージュネコメガエルなどが流通。形や色が美しい種類が多く、植物を利用した立体的なレイアウトの中にいるのを目にすると、じっと見入ってしまうような魅力的なカエルです。

天城山周辺の景色

ただ、この種のカエルは、飼育されるケージが植物を多用した自然に近いレイアウトになるほど、景色にとけこんでしまってどこにいるかわかりにくくなります。ペットショップや水族館などの展示でも、ケージを下から眺めたり、横から眺めたりと、じっくり探さないと居場所がわからないことがよくあります。

ケージのなかでさえそんな状態ですから、樹上性のカエルと自然界で出会うのは非常に困難です。モリアオガエルも、いるところにはいるはずですが、森や雑木林の中に探しに行って見つけるのは簡単ではありません。葉っぱを隠すときは森の中に隠せ、と言いますが、体の色を保護色に変えることが出来るモリアオガエルを森の中で見つけるのは、森の中で隠された葉っぱを見つけるのと同じで、至難の業。

そんなモリアオガエルですが、繁殖期だけは人の目につきやすくなります。モリアオガエルの繁殖は特徴的で、池の上に張り出した木の枝に白っぽい泡のような塊を作って、そのなかに卵を産みます。孵化したオタマジャクシは、泡の塊からポタポタ落ちて池の中で生活します。水辺の枝にそんな白い泡の塊があれば、比較的目につきやすいですよね。産卵時は、メスが卵を産む白い泡の塊に複数のオスが集まってくるので、成体そのものを見ることが出来るチャンスでもあります。

さて、そのモリアオガエルのものと思われる白い泡の塊(卵塊、卵嚢、泡巣)を、静岡県の天城山で6月の上旬ごろに見かけました。

モリアオガエルの卵塊モリアオガエルの卵塊

現場は、すり鉢状の地形のボトムの部分にある小さな水たまり。あたりの地面は、土がむき出しとなったような場所で、水も泥で濁っています。水たまりの深さは、濁っているだけに外からは伺えませんが、地形から判断して2、30センチくらいの印象。好天時にはすぐに干上がってしまいそうな雰囲気です。

モリアオガエルの卵塊があった水たまり

水たまりの上には木の枝が張り出していたものの、枝が横に広がって伸びるような広葉樹は、水たまりの周りにまばらに生えるのみ。あたりは、基本的に針葉樹がメインです。枝打ちなど林業的な手入れもされていて、下草もあまりありませんでした。

周辺の様子

カエルが普段暮らす場所としてはあまりいい条件とは思えないのですが・・・繁殖時には、水場を求めて遠くから集まって来るものなのでしょうか。いずれにせよ、よくこんなところでというのが正直な印象でした。

ちなみに、天城山そのものは豊かな自然がある素晴らしい場所でした、念のため。

スポンサーリンク