アカアシガメの飼育方法

アカアシガメは、南米の熱帯雨林に住むちょっと大きなリクガメ。成体になると片手では持てない大きさになりますが、両手で抱えれば何とか持てるサイズです。場合によっては台車がないと動かせないヒョウモンリクガメやケヅメリクガメよりは、一回り小さい大きさになります。

iZooのアカアシガメ

アカアシガメは、前足や頬に赤色の部分があります。リクガメといえば、黄色や黒系統のカラーがメイン。それだけに、アカアシガメの赤をみると、はっとさせられる時があります。

そんなアカアシガメ、動物園でも見ることができますが、ペットとしても流通しています。飼育の一助とするため、専門施設での飼育環境やエサについてご紹介します。

飼育参考書にみるアカアシガメの飼育方法

専門施設での実際の飼育環境をみる前に、名高い飼育書における記載を確認します。

Q&Aマニュアル爬虫両生類飼育入門」には、アカアシガメの飼い方について次のように記載されています。

ビバリウムのサイズ:以下はペア1組あたりの大きさ。気候が適していれば、大型種は屋外で飼育したほうが良い。最低240×240×60cm。屋内の場合は、1部屋全体、または部屋の一部を利用するのが理想的。

床材:厚さ5~8cm。ローム土または枯れ葉。

居住環境:温暖な気候なら屋外で飼育する。寒くなったら、温かい室内に移す。日陰や隠れ家を用意する。飲み水や入浴のための浅い水皿を置く。毎日水を吹きかける。

気温:室内の場合、フルスペクトル(UVB)ライトと日光浴用のレフ球。低温部で24℃、ホットスポットで32℃、夜間は22℃以上。光周期:12~14時間。湿度:85~90%。

食餌:さまざまな草類および最大20%の果物類。マッシュルーム、モヤシ、青豆、そら豆、アルファルファなど。屋外飼育の場合は、たまにビタミン剤を与える。

千石正一著「爬虫両生類飼育図鑑」のアカアシガメの項には、

中米のパナマから南米の熱帯域にかけて分布。甲長26~35センチが普通だが、最大では51センチを越える。本来の生息場所が森林内であり、リクガメとしては日本での飼育環境によく適応するようで、日本でも長生きしている例がそう少なくもない。テラリウムで飼い、水を浅い水皿に入れておいて常に与える。特に暖房中は、過度な乾燥を防ぐためにスプレイするとよいが、ガラス面にしずくが付くほどじめじめさせてはいけない。気温は24〜30℃がよく活動し、日中はそのぐらいで、夜には下げるが20℃以下にはしないのが安全。葉菜・根菜・トマト・果実等の他、動物質としてミミズ・ナメクジ・昆虫・ピンクマウス等を丸ごと与えるようにすると良い。肉類を与えるときには特にカルシウムの添加が必要。

とありました。

なお、「Q&Aマニュアル爬虫両生類飼育入門」には、産卵と孵化後の子ガメについての記述もありました。

続いて、実際の飼育環境をみていきます。

iZooにおけるアカアシガメ飼育環境

日本の爬虫類飼育の総本山ともいえる存在、iZoo。ここではゾウガメを含む多数のリクガメを飼育していますが、アカアシガメは下のような環境にいました。

iZooの飼育環境(アカアシガメ)

床材は、日本の野外にあるような土を使用。湿り具合も、春から秋にかけての、乾燥していない時期の屋外の土に近い感じです。全体としては、ジメジメしているわけでもなければ乾燥しているわけでもありませんが、広いケージですので、場所によって湿ったところ・乾いたところがありました。

ケージ内の一角には、数匹が同時に入れる大きさの水たまりが設けられています。カメたちの動きはよく、この水たまりに入ったり、出たりする個体が結構いました。

水場には、よく入る(アカアシガメ)

この水たまり、土の部分を自然な感じで掘り下げて作られており、通常ならすぐ水が汚れてしまいそうな造り。そのため、横にある岩を伝って常に少しずつ水が補充され、同時に少しずつ排水溝から排水される仕組みとなっています。自然な環境を再現したうえで、飲み水としての水質も確保する、飼育設備としてのクオリティの高さを感じます。

iZooのアカアシガメの餌

キャプションには、「森林などに棲息し、前足が赤いのが特徴です。オスは大きくなると甲羅の側面中央部がくびれる個体が多いです。植物中心の雑食性でなんでもよく食べます」とあり、エサは葉物を与えていました。

東山動物園自然動物館のアカアシガメ飼育レイアウト

アルダブラゾウガメやエミスムツアシガメといった大型のカメを飼育する名古屋市東山動物園自然動物館。アカアシガメは温室で飼育していたこともあったようですが、訪問時(冬)は、屋内のスペースでキアシガメとともに飼育されていました。

東山動物園のアカアシガメ飼育スペース
エサを食べている個体の左側がアカアシガメ。右側は、キアシガメ。

ケージの床材は、砂。シェルターの近くなどはやや乾いた感じでしたが、水場近くのエリアなどは湿った感じで、割合としては湿った部分の方が多い印象。水場は、入って動き回れる広さのスペースのものが用意されています。

左側が水場となっている(アカアシガメ)

ケージ内には岩陰のような場所があり、そこに隠れているカメが2匹。

アカアシガメは、多頭飼いされているシーンをみると、なぜかケージの隅の方でかたまっていることが多いです。森林に生息する種類とのことですが、開けすぎている場所が苦手なのかもしれません。上の岩陰のようなシェルターを用意してやると、使ってくれそうです。

アカアシガメのエサ

アカアシガメの餌について、冒頭で参照した飼育参考書には、草・野菜系を基本としつつも、いくつかプラスαの品目の記載がありました。現実には、プラスアルファとしてどのようなものが与えられているのでしょうか。

東山動物園で与えていた餌を見てみると・・・

東山動物園のアカアシガメの餌
床材の砂と湿り具合も参考になる。

青菜や、冬場の葉物の定番・白菜をメインとして、僅かに根菜類が加えられています。左端の方には、バナナのかけらが2、3片見えます。

東山動物園では、アカアシガメと生息域が重なるキアシガメとを同じケージで飼育しています。上記のエサも、アカアシガメとキアシガメ両方のためのもの。ただ、それぞれの種類のキャプションを見ると、そこには微妙な違いが表現されていました。

アカアシガメは、「葉野菜や野草を中心に果実を採食する」。キアシガメは、「植物のほか、果物や、動物の死骸も食べる」「雑食性が強く東山動物園でも週に1回お肉を与えている」。

逆に言うと、アカアシガメには週1回の肉を与えていない、と推測されます。

他の施設では、どうでしょうか。上野動物園で訪問時に与えていた餌は、粉末(カルシウムかビタミンか不明)をかけた葉物。HPによると、菜類、果物、レバーなどをあたえているそうです。

上野動物園のアカアシガメ

キャプションに「草や多肉植物、果物のほか、動物の死骸も食べます」と書かれていた、登別マリンパークニクス陸族館のエサも、同じく訪問時は葉物のみ。

登別マリンパークニクスのアカアシガメ

各施設において毎日の餌やりを観察したわけではありませんが、メインとなるのはあくまで野菜類であり、プラスアルファについては、常時・多量に与えるものではない、という印象を受けました。

なお、餌については円山動物園における野草などをメインとしたメニューがネットに写真付きで公開されており、大変参考になります。

気温の許す限り屋外飼育、冬場は屋内飼育

さて、ここまで、アカアシガメ飼育における基本形を見てきました。餌については、爬虫類飼育者にとって特別に難しい点はないと思います。多くの人にとって現実的な問題となりそうなのは、アカアシガメが満足するだけのスペースをいかにして確保するか、ということ。

幸い、春~秋にかけての気温の条件を満たす期間は、外飼いが出来そうです。もちろん、真夏の直射日光にカメをさらしておくようなことは問題外ですが、庭などに一定のスペースを確保し、 適切なシェルターとともに森林棲であることを踏まえた環境を整備すれば、良い飼育環境になります。

問題は、冬。気温の面からも、湿度の面からも外飼いは不可能です。冒頭で紹介した飼育書には、一部屋全体または部屋の一部を利用・・・とありますが、どのような飼育設備が考えられるのでしょうか。

参考になりそうなのが、足立区生物園の飼育ケージ。

たっぷりの厚さの床材を敷き、体が入る大きさの水場にシェルターと、基本的なところは押さえられたケージです。このクラスに近いケージを確保したうえで、可能な時には充分に暖房・加湿した部屋に放して遊ばせてやれば、理想に近づきます。

部屋に放すときは、下に人工芝などを敷くと、カメにとっても掃除の面からもよさそう。

アカアシガメ
登別マリンパークニクスのケージ。タイル式の人工芝を床面に敷いている。

アカアシガメは、リクガメのなかでも存在感のある大きさのカメ。見ている限り、良く動くカメでもあります。冬場を除けば日本の環境とも相性が良いようですので、スペースをしっかり確保した上で、伸び伸びと飼ってみたいものです。

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