エボシカメレオンの飼育ケージレイアウト3選

「カメレオン」といえば、爬虫類好きでなくても知っている普通名詞。ほかに類をみない独特の姿かたちや、体色を変化させる特徴が広く知られています。

東山動物園のエボシカメレオン

ただ、存在として知っていても、飼育対象として意識する機会は、爬虫類両生類好きでもあまりなかったのではないでしょうか。実際、基本的にカメレオンの飼育は易しいものでありません。しかし、近年では、今回ご紹介するエボシカメレオンのCBのように比較的丈夫な種類が流通するようになり、適切な環境を用意すれば、きちんと飼いこめて、繁殖まで狙えるようになってきています。

今回は、その「適切な環境」を探るべく、詳しい飼育書の記載をみたうえで、国内トップレベルの飼育技術を誇る施設での飼育環境を紹介します。

文献にみるエボシカメレオンの飼育方法

冨水明著「爬虫両生類の上手な飼い方」は、表紙の写真にカメレオンの写真を採用しているだけあって、カメレオンに関する記載がとても充実しています。エボシカメレオンの飼育例について見開きで2ページ、各種カメレオンの紹介に4ページ、カメレオン一般の飼い方について文章のみで約2ページと、割かれている紙幅はかなりのもの。そのなかから、ごく一部を抜粋・引用すると・・・

エサ・・・メインはなるべくコオロギにし、オヤツ程度にジャイミル(サイト注:ジャイアントミールワーム)や果物、葉野菜を与える。

東山動物園はエサにコオロギを与えていた

水・・・多くの種で、毎日の霧吹きは欠かせない。そしてより重要なのが、飲み水。水容器を置いただけでは、樹上性のトカゲ以上に気づかない。必ずドリップ式か、エアレーション式にしたい。

ケージ/レイアウト・・・背の高い余裕のあるケージを用いたい。また、乾燥を好むエボシには通気性の良いサイドメッシュのケージが適しており、そこも活動の場にできる。ケージ内には鉢植えの観葉植物を入れておくと、それが維持できていればカメレオンにとっても良い環境であるという指標になる。もちろん彼らの生活の場にもなる。また、完全樹上性である彼らには登れる枝が必需品だ。

ケージの置き場所・・・彼らは見下ろされるのを嫌う。彼ら自身が見下ろしていないと安心できない。よってケージは、目線よりも高いところに置きたい。ケージの置き場で重要なことが、もうひとつある。それは、そばに他の爬虫類、特にヘビを置かないことだ。特にヘビ、もしくはそれに近い容姿のトカゲ、鳥を非常に恐れる。そういった動物の存在自体がストレスになるので、注意したい。

保温・・・遠赤外線ヒーターをケージ側面に貼るくらいで問題ない場合が多い。というのも、常に高温にしておく必要がある種はおらず、昼夜の温度差を好むものが多いからである。よって保温のメインはバスキングランプということになろう。

紫外線・・・紫外線は必要だが、ほとんどの種で明るすぎる環境を嫌う。よって紫外線の供給は蛍光灯タイプで行ない、必ず日陰を設けておく。

「爬虫両生類の上手な飼い方」 は、情報量が多く各品種のカラー写真もきれいな本。カメレオン飼育を考えている方はぜひ参照してみてください。

札幌市円山動物園のエボシカメレオン飼育ケージ

生息環境をきめ細やかに再現した展示が参考になる札幌市円山動物園。ここのエボシカメレオンは、縦に長いケージで飼育されていました。 ケージの中には、カメレオンが止まれる太さの木の枝が張り巡らされています。 写真ではわかりにくいのですが、ケージの網の上には水供給用らしき細いチューブが見えます。

円山動物園の飼育ケージ

キャプションには、

突出した眼球、ミトン状の指、巻きつけに適した尾、粘着質の長く伸びる舌、強い変色能力などカメレオン独特の形態は樹上生活に適応した結果と考えられる。本種は中東イエメンに生息し、カメレオンの中でも大型種。オスの頭部は上方に高く伸び、烏帽子(えぼし)のように見えるのが種名の由来である。カメレオンは通常昆虫食を中心とした肉食だが、本種は葉や果実など植物も食べる。

とありました。

円山動物園のエボシカメレオン2

3つもある!東山動物園のエボシカメレオン飼育レイアウト

国内有数の爬虫類・両生類展示数を誇り、それを支える施設面・設備面も充実している東山動物園。エボシカメレオンは、3匹が1匹ずつ、3つの飼育ケージで飼育されていました。

樹上性カメレオンに必須・木の枝組みで注意すべきこと

3つのケージすべてが、観葉植物を中に配し、複数の木の枝を組み合わせてつくったレイアウト。エボシカメレオンは完全樹上性なので、枝組みの質・規模が非常に重要となります。

注目すべきは、木の枝の細さ。エボシカメレオンの手(冒頭の写真を参照してください)をみるとわかるのですが、あまり太い枝は、カメレオンには適しません。東山動物園でも、人間の腕くらいの太さの枝はほとんど使わず、指の太さくらい、もしくは鉛筆の太さくらいの枝をメインとしたレイアウトを組んでいました。下の写真のように、相当細い小枝にとまる場面もよく見られました。

東山動物園のエボシカメレオンケージ①

木の枝について、もうひとつ気をつけるべきなのは、その位置。前項で紹介した 「爬虫両生類の上手な飼い方」 では、 ケージの蓋にエボシ(トサカ)を擦り付けてケガをするケースが多いため、ケージ上部と木の枝を充分離すよう注意がありました。

完全樹上性のカメレオンにとって、木の枝はケージ内の通り道そのものです。後述するホットスポットや水飲みスポットにも、枝の道を通っていくことになります。枝組みの規模・充実度が行動範囲を決めるため、しっかりしたものをつくってやる必要があります。

エボシカメレオンの保温器具で注意すべきこと

東山動物園のエボシカメレオンケージ②

「爬虫両生類の上手な飼い方」では、ケージレイアウト作成における注意事項として、バスキングライトとエボシ(トサカ)や体が接触し、ヤケドを負うケースについて言及がありました。保温が十分でなく、ケージが狭い場合に、カメレオンが バスキングランプに近づきすぎてこういう事故が起こりやすいとのこと。

バスキングライトは大きいものを離して使う

ケガを防止するには、①余裕のある大きさのケージで、大きなバスキングライトを遠くからあてる、②それが出来なくてもヤケド防止カバーをつける、などの対策が必要。また、ケージ全体が寒いためにバスキングライトに過度に近づいているような場合は、パネルヒーターで全体の温度をしっかり上げることも不可欠です。なお、カメレオンは多くの種で、暑すぎるときは体色が白や黄色っぽくなり、寒いときは色が濃くなるそうです。また、保温も必要ですが、一方で高温にも弱いので、夏場はエアコンの稼働が必須となります。

カメレオンの水容器で注意すべきこと

カメレオンへの水供給で注意すべきは、水に動きをつくるということ。カメレオンは、動いていない水を認識しません。水容器をケージに入れただけだと、水分がとれずに弱ってしまいます。

東山動物園のエボシカメレオンケージ③

エボシカメレオンに気づいてもらえる水供給の方法として東山動物園が採用していたのは、ドリップ式。細いチューブをケージ上部に配し、先端から水をポタポタたらします。水滴は、付近の木の枝や観葉植物の葉にあたり、付近を濡らしています。

ドリップ式水供給

水滴が落下するあたりの底面は、大磯砂を濡らした状態にしているスポットもあれば、受け皿を置いているスポットもありました。ドリップ式では水はポタポタとしか垂れませんが、ずっと落下し続けているため、一日ではかなりの量の水がケージの底面にたまることになります。底面が水浸しになっては衛生上問題があるため、排水の方法は考えておく必要があります。

下の受け皿

なお、水容器をある程度の大きさの容器とし、そこにエアレーションをかけて水面に動きをつくる方法もあるようです。

iZooのエボシカメレオン飼育レイアウト

日本の爬虫類飼育における総本山ともいうべき施設、iZoo。ここでは、多くの種類のカメレオンを飼育していますが、エボシカメレオンが飼われていたのはこちらのケージ。

iZooのカメレオン飼育ケージ

ここでは、閉園間近にちょうど係の方が霧吹きをするタイミングを見ることができました。霧吹き、といっても上からの散水といった規模。高い位置から作業をしていたのでよく見えませんでしたが、小型のジョウロのような器具をつかっているようです。

iZooのエボシカメレオン

カメレオンは、水が滴る上部に移動して、気持ちよさそうにしています。

カメレオン飼育において、毎日の霧吹きは必須。「爬虫両生類の上手な飼い方」によれば、カメレオンは水分不足になると舌の粘度が落ち、エサの摂取にも支障がでてくるそうです。iZooのやり方を参考に、新鮮な水を与えてあげたいですね。

霧吹きというより散水

なお、iZooにはカメレオンの野外飼育場があります。この野外飼育場、網に覆われていない木立にカメレオンを放し飼いにするというもので、ジャクソンカメレオンが放されています。iZooは複数の種類のカメレオンを飼育しており、カメレオン飼育者にとっては必見の施設です。

エボシカメレオンは、あこがれのカメレオンの中では飼いやすい種類。ただ、それはしっかりした飼育環境を整えることが前提です。飼育本や各施設の飼育例を参考に、生き生きと暮らせる環境をつくってみたいですね。

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