尾瀬は、群馬県・福島県・新潟県に跨がる、周りを山で囲まれた広大な湿原。たどり着くのが大変な奥深い場所にあることや、人間による農業利用等に適さない湿地帯であること、長い冬場の気象環境が厳しいことなどから、あまり人の手が入らない状態で残されてきました。
20世紀に入ってから、周りを高い山で囲まれた地形を利用して発電用のダムとして開発する話が進んだものの、貴重な湿原としての意義が認められて計画は見送りに。以後は国立公園に指定され、守るべき自然環境としてしっかり保全された場所となっています。
そんな尾瀬に、秋が深まる9月に行ってきました。尾瀬の9月は、既に肌寒く草紅葉がはじまる季節です。木道の上をモウセンゴケやエゾリンドウの青い花を見ながら歩いていくと、池塘の中にゆれるものをみつけました。
アカハライモリです。息を吸いに、時々水面まで上がってきて、また潜っていきます。
アカハライモリは、ペットとして数百円という安価な値段で流通している身近な両生類です。身近・安価であるがゆえにあまり注目されない存在ですが、実はとても面白い特徴を持っています。
- アカハライモリは、小さな体ですが寿命が長いそうです。飼育下では25年ほど生きた記録があるそうです。
- アカハライモリは、毒を持っています。腹側の赤い色は、この毒の存在を天敵に対して示す警戒色の役割があるそうです。
- アカハライモリは、身体の再生能力を持ちます。トカゲも尾の再生能力を持ちますが、身体の他の場所も再生する訳ではありません。アカハライモリの場合、身体が欠損した時に再生できる部位が多いそうです。
ユニークな特徴と、腹側の鮮やかな模様により海外でもペットとして人気のあるアカハライモリですが、東京などでは野生個体はほとんど見られなくなっています。
生息にあたって湿地帯や水場が必要な生き物は、生息環境が失われたり分断されたりしやすく、都市化により真っ先に姿を消していきます。私も、野生のアカハライモリは過去に島根県の神社の池で見かけたことがあるだけ。
尾瀬で野生の姿を見ることが出来て、うれしい気分になりました。