投稿者「神栖紗英」のアーカイブ

まさに刑事ドラマ・爬虫類関連の事件も扱う「警視庁いきものがかり」

「警視庁いきものがかり」は、動物に関係する事件を専門に扱う現役警察官の方が、今まで担当してきた希少動物の違法取引事件などを振り返って紹介する事件簿。爬虫類両生類に限定した本ではありませんが、まるで刑事ドラマのような話が実際の出来事として語られること、登場する希少動物のかなりの割合が爬虫類であることから、引き込まれるように一気に読んでしまいました。

著者の福原秀一郎さんは、子供のころから動物が好きで、高校時代は獣医を目指していたという方。警察官になってからも、官舎(警察官の社宅)に熱帯魚水槽を6~7本も置くほどの生き物好きです。警察官としての専門分野を持ちたいと願っていたところ、プライベートで行った熱帯魚店でみたある光景をきっかけに、仕事として動物事案を扱うようになったそうです。

本の中では、警察官としてのキャリアや、捜査・立件のプロセスなどの仕事内容について、事件のエピソードをまじえながらわかりやすく説明されています。

いくつかあるエピソードのうち一部のさわり部分を紹介すると・・・

・爬虫類密取引事件の犯人を追って行くと、マダガスカルの刑務所で爬虫類密輸出の刑で服役していた。外交ルートの助けも借りて日本に帰国させて逮捕できるよう手配したが、帰国途中の乗り継ぎ空港で姿を消した。その後・・・

・動物園から立て続けにホウシャガメ、クモノスガメ、エジプトリクガメなどの貴重なカメが盗まれた。事件をきっかけに被害にあった飼育係と繋がりが出来て、協力し合う関係に・・・

・密輸したワニ・マレーガビアルを正規に登録された個体として売るため、ある容疑者が正規の個体から生まれた個体であるというデータを捏造。隙のないデータだったが、なぜバレたのか・・・

といった感じで、刑事ドラマや警察ものの小説で出てくるような話が、現実の話として出てきます。

さて、この本は単独で読んでも非常に面白い本なのですが、ぜひとも一緒に読んで欲しい本があります。別ページで紹介する、白輪剛史著「動物の値段」という本です。

「動物の値段」は、動物を取引する立場の動物商の方が書いた本。動物商は、動植物の取引規制を受けて、規制に触れないように取引を行うのが仕事です。一方の警視庁のいきものがかりは、規制を受けて、規制に違反した人を取り締まる立場。どちらの本からも、動物への思いが強く伝わってきますが、関わり方が違うと見えている景色も違ってくる。併せて読むとそんなことが伝わってきて、面白さが倍増すること請け合いです。


警視庁 生きものがかり

民俗学者の雑学ノート「カエルを釣る、カエルを食べる」

「カエルを釣る、カエルを食べる」は、動物生態学から民俗学に専攻を転じたという国立民族学博物館名誉教授・周達生さんがカエルについて書かれた本です。副題に「両生類の雑学ノート」とあるとおり、基本的には著者の体験に基づくエッセイですが、学者の方らしく専攻の民族学的観点からの記述が含まれています。

一読して印象に残ったのは、カエルの餌にまつわるちょっとした記述です。内容をかいつまんで紹介すると、

・クワガタを飼っていた時、エサのバナナ目当てにショウジョウバエがやってきた。応用して、アマガエルの飼育容器にバナナを置けば、エサとなるショウジョウバエが簡単に確保できる

・中国でウシガエルの養殖が成功した理由。動かない餌を食べさせる方法とは?(上記アマガエルのアイデアと違って、簡単に応用可能な方法でないと感じました)

といった感じです。このほか、

・60年にわたってやってきたウシガエル釣りの経験談

・カジカガエルの飼育籠(河鹿籠)の思い出と、三朝温泉で河鹿籠と再会したときのエピソード

・惚れ薬であるイモリの黒焼きの話から、檜枝岐村のサンショウウオ料理につながるくだり

も興味深かったです。

本の内容のベースは、著者の方の記憶や、長年書き溜めてきた手帳・日誌に記された出来事とのこと。この本の執筆を機に、手帳・日誌のカエルに関する記述を読み直したそうです。また、読んでいると執筆のためにフィールドを再訪する話がよく出てきて、現場を重視する民俗学者らしい姿が伝わってきます。文中各所で引用される文献も豊富で、関係分野についての膨大な読書量を感じさせます。

飼育のノウハウ本でもなく、マニアの方の体験談でもない。少し古い時代の話が中心ですが、珍しいテイストの本として一気に読んでしまいました。


カエルを釣る、カエルを食べる 両生類の雑学ノート (平凡社新書)

子ガエルの餌候補?カラスノエンドウのアブラムシ

道を歩いていて、カラスノエンドウの花と豆の鞘を見かけました。

子ガエルの餌候補?カラスノエンドウのアブラムシ1

近寄ってみると、たくさんのアブラムシがついています。

子ガエルの餌候補?カラスノエンドウのアブラムシ2

アブラムシの近くには、小さな黒い生き物が・・・テントウムシの幼虫です。確か、アブラムシを餌にしているんですよね。

子ガエルの餌候補?カラスノエンドウのアブラムシ3

テントウムシもいました。

子ガエルの餌候補?カラスノエンドウのアブラムシ4

おたまじゃくしが上陸したあとの、子ヒキガエルの餌に良さそうです。 子ガエルの餌の確保は大変なので、そろそろ考えないといけません。とりあえず、キャベツを育てて虫がつかないか試していますが、そちらにもアブラムシがついています。

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天城山でみたモリアオガエルの卵塊

モリアオガエルは、日本に生息する樹上性のカエル。樹上性のカエルとは、発達した吸盤を頼りに生活の大部分を木の上ですごすカエルのことで、ツリーフロッグとも呼ばれます。ペットとしては、イエアメガエルやアカメアメガエル、ソバージュネコメガエルなどが流通。形や色が美しい種類が多く、植物を利用した立体的なレイアウトの中にいるのを目にすると、じっと見入ってしまうような魅力的なカエルです。

天城山周辺の景色

ただ、この種のカエルは、 続きを読む

初心者向け、多数の種類を紹介「爬虫両生類の上手な飼い方」

「爬虫両生類の上手な飼い方」は、有名な「ビバリウムガイド」の記事を執筆されている冨水明さん、海老沼剛さんが書かれた、初心者向けの飼育種カタログ・飼育方法解説本です。出版は、ビバリウムガイドと同じエムピージェー。爬虫類専門誌が発行しているだけあって、レイアウトやカラー写真の使い方がきれいです。大きさは雑誌サイズで、紙質もかなり高め。

本の構成としては、爬虫類両生類各グループのなかから人気種(例えば、ホシガメ、ヒョウモントカゲモドキ、フトアゴヒゲトカゲ、ボールパイソン、ベルツノガエル、メキシコサラマンダー・・)をピックアップし、飼育例を写真付きで解説。そのあとに、人気種と同グループの他種類を図鑑的に紹介するという流れになっています。他種類紹介の後には、文章中心の飼育方法解説ページが設けられています。

この本ですごいのは、掲載している種類が多いこと。日本でペットとして流通している種類は、ほぼ網羅的に紹介されているのではないでしょうか。紹介されている種類は、すべて綺麗な写真付き。それぞれ、学名や分布地域・全長などのデータや、簡潔なコメントも載っています。コメントにときどき、市場での流通状況について言及があるのが特徴的。流通と深く関係する野生個体(WC)か養殖個体(CB)かについても、随所に記載されています。

紹介ページのあとの飼育方法解説は、初心者向けのわかりやすい文章でありながらも、数ページ以上にわたるしっかりとした内容です。種についての基本的解説からはじまって、選び方・迎え入れる前後の準備、ケージと飼育設備、給餌、日常管理などの基本項目が押さえられています。

この本の副題は、「これから楽しむ方へ 豊富な図鑑とわかりやすい解説」です。そのとおり、これから飼い始める方や、実際に個体を入手する前によく調べたい方には、おすすめの一冊です。


爬虫両生類の上手な飼い方 (アクアライフの本)