春先や初夏のころに、水たまりでおたまじゃくしを見つける機会は多いと思います。
今回は、そういった機会にオタマジャクシを見つけて、発作的に家に持ち帰って来たようなケースを想定。手間がかからずにすぐに用意できて、おたまじゃくしに適したエサは何か、考えてみました。
目次
おたまじゃくしは草食傾向の強い雑食性
自然環境下のおたまじゃくしは、水の底にたまった有機物・デトリタス(要は泥)や、石や水草・池の側面などに生えているコケを歯で削りとるようにして食べています。事実、ガラス面に茶色いコケ(珪藻)が発生した水槽にオタマジャクシを入れると、よろこんでコケを食べます。また、小魚の死骸などに群がっているのを見かけることもたまにあります。水のなかにある食べられるものをなんでも適当に食べているように見えますが、実際のところはどのような食性を持っているのでしょうか。
おたまじゃくしの食性について言及している本から、いくつか記述をピックアップしてみました。
海老沼剛著「お茶目なカエルと暮らす法 かえる大百科」(P120)には、
ほとんどのオタマジャクシは藻類や水底に沈殿した植物質、プランクトンなどの小さく柔らかいものをつついたりなめるようにして摂取する。
との記載があります。また、ロバート・デイヴィス/ヴァレリー・デイヴィス著、千石正一監訳「Q&Aマニュアル爬虫両生類飼育入門」には、
オタマジャクシは基本的に草食だが、かたやサンショウウオの幼生は肉食というように、両者の食性は全く異なる。
とあります。
どうやら、一般的なオタマジャクシは草食傾向が強いということが言えそうです。
市販のエサから草食性の生き物向けの餌を選ぶ
おたまじゃくしが草食性だということはわかりました。理想的には、太陽光の下に水を汲みおいて、板などに茶ゴケを発生させてエサにできれば良いのかもしれません。よく言われるように、ホウレンソウの茹でたものを使うのもいいアイデアだと思います。ただ、茶ゴケはすぐに発生しませんし、ホウレンソウを買ってきて毎日茹でるのも大変です。
「オタマジャクシの餌」が売られていれば簡単ですが、市場規模が見込めないせいか見つけることができませんでした。そこで、すでに売られている他の生き物用の餌のうち、食性が似ている生き物の餌を流用することを考えてみます。
大きなホームセンター・ペットショップの、水棲生物の餌のコーナーに行ってみました。熱帯魚、金魚、カメ、ウーパールーパー、エビなどの餌が並んでいます。魚用の餌は特に種類が豊富で、コリドラス、ドジョウ、錦鯉・・・のように細分化されています。
草食性の生き物をターゲットとしたエサは少なかったのですが、プレコ用のフードというものが何種類かありました。
植物質を好むプレコ用の餌に着目
プレコは、熱帯魚の一種で水槽に発生するコケの掃除役として飼われることがある魚です。水中をひらひら泳ぐのではなく、平べったい口でガラス面や流木などにくっついて生活しています。食性も、ガラス面や流木、水草の葉に発生したコケなどを餌にしている草食性の生き物です。
草食性のプレコ向けフードが、実際どのような材料からつくられているのか、容器の記載から原材料を確認してみました。なお、こういった原材料欄の記載は、通常含有量が多い順に並んでいるそうです。
テトラ プレコ アルジーの原材料表記
穀類、植物性蛋白、野菜類、酵母、スピルリナ、海藻・・・
テトラ プレコ ベジーの原材料表記
穀類、植物性蛋白、野菜類、酵母、野菜(ズッキーニ)、海藻・・・
確かに、植物性の原材料からつくられています。ちなみに、同様にカメなど他の生き物用のエサの材料を確認したところ、主要な原材料はフィッシュミールなど動物性のものが多いようでした。また、プレコ用フードならどれでも植物性の原材料をメインに作られているわけではなく、動物性の原材料から作られているものもありました。
原材料表記とは別に、保証成分の欄もありました。ここでの「粗蛋白質」の割合が、上記テトラ2製品は29%以上となっています。他の生き物用の餌は、40~50%以上となっている製品が多い印象でした。
おたまじゃくしの餌としては、プレコ用のフードがよさそうですね。
原材料成分以外に考慮すべき点
おたまじゃくしの餌について、原材料成分以外に考慮すべき点は何でしょうか。
1.オタマジャクシにとって食べやすいかどうか
オタマジャクシは、歯で削り取るようにして餌を食べます。自然環境下でも、池の側面や石などにしがみつくようにしてエサを食べているのをよく見かけます。この観点から、フレーク状のエサや浮上性のエサは食べづらく、適さないのではないかと思います。ただ、これはヒキガエルのオタマジャクシを前提とした意見ですので、種類によっては食べやすい形態がかわってくるかもしれません。
2.水質を悪化させないか
生もの系や柔らかいタイプのフードは水質の悪化を招く可能性があります。短時間で食べられることを想定した餌より、底もの系生き物用など長く水中に留まることを前提としてつくられたエサの方が適していると感じます。
前項のプレコ用フードは、沈下性の平たいタブレットタイプのエサで、プレコが時間をかけて削り取ってたべる(過去にプレコを飼っていたのですが、夜にならないと出てきません。エサは夜中に食べます)ことを前提につくられているので、上記2つの条件を満たしているといえます。
おたまじゃくしのエサについてのその他の注意事項
1.海老沼剛著「お茶目なカエルと暮らす法 かえる大百科」、千石正一著「爬虫両生類飼育図鑑」の両方で注意があったのですが、オタマジャクシは自らの糞をエサとして食べるため、糞を完全に捨ててしまうような水換えはしてはいけないそうです。
2.オタマジャクシを卵から育てる場合、まだ十分に泳げないような最初の段階の餌は、卵を包んでいたゼリー状の紐になります。この卵の紐の残骸は、すぐに食べつくされて無くなるので、捨ててはいけません。
3.カエルになる直前は体のつくりが大きく変わり、カエルになった後は食性も大幅に変わります。カエルになる直前はあまりエサを食べなくなりますが、海老沼剛著「お茶目なカエルと暮らす法 かえる大百科」によれば、尻尾が体に吸収されてその栄養分で生きているとのこと。また、千石正一著「爬虫両生類飼育図鑑」によれば、この時期には動物質の餌を多くするとよいそうです。
以上、おたまじゃくしの餌についてでした。ちなみに、おたまじゃくしの飼い方・育て方全般については「おたまじゃくしの飼い方・育て方 記事まとめ」に、このテトラプレコアルジーで育てたヒキガエルのオタマジャクシの成長過程については「おたまじゃくしからカエルまで」にまとめてありますのでよろしければご参照ください。
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