老舗本格派爬虫類両生類展示施設・草津熱帯圏

このサイトでも何ヶ所か紹介していますが、爬虫類両生類関係施設と温泉地は、どうやらかなり相性がいいようです。適度な集客が見込めることに加えて、飼育に温泉熱を利用できるメリットもあります。

草津熱帯圏の熱帯大ドーム

そんな温泉&爬虫類の組み合わせの中で、温泉地としても超一流、爬虫類両生類飼育施設としてもトップレベルという場所があります。

草津温泉の老舗動物観覧施設、草津熱帯圏です。

公式ホームページ:草津熱帯圏

草津熱帯圏へのアクセス、行き方

草津熱帯圏が位置する草津温泉へは、鉄道・バスなどいくつか行き方があります。ただ、どんな行き方をするにせよ、玄関口となるのは草津温泉バスターミナル。

草津熱帯圏は、草津温泉バスターミナルから歩いて10分弱の場所にあります。湯畑などの草津中心街からも歩いて10分程度で着いてしまう立地で、場所は各所で入手できる草津温泉街のマップにも載っています。

草津周辺地図

入り口があるのは、メインとなる熱帯大ドームとは別の建物。ここで入場料を払って資料展示やお土産のコーナーを抜け、右手にサル山を見ながら歩いて行くと、ドーム型の施設が見えて来ます。

草津熱帯圏の入り口

ドームの中に入ると、植物が茂る温室の雰囲気。階段を数段上がると、通路の両脇にワニ・中大型リクガメの飼育スペースが並んでいました。

大人になったマレーカビアルの国内初繁殖個体

この草津熱帯圏、ワニの飼育種類数がかなり多く、

  • マレーガビアル(ガビアルモドキ)
  • シャムワニ
  • ジョンストンワニ
  • コビトカイマン
  • パラグアイカイマン
  • メガネカイマン

と、6種類もいます。基本的に上から見る方式で、水がとてもきれいなのと、視界が遮ぎられない手すりの上から眺めることができるため、生体がとても見やすいです。

イチ押しだったのが、マレーカビアル。ワニは種類によっては養殖されていたりしますが、マレーカビアルは希少種で、その繁殖に国内で初めて、世界でも2例目に成功したのがここ草津熱帯圏とのこと。2003年のことで、その時生まれた個体が成体になって展示されています。

大人になったマレーガビアル

飼育スペース脇には、当時の事情がわかる新聞記事が掲示されていました。

割かれていた紙面はかなり大きく、事実関係を報ずる本文に加えて

  • 先を越されたという円山動物園のコメント
  • 草津の冬を体験させるウインタークーリングを試したことが繁殖につながったとの飼育担当者のコメント

が紹介されていました。記事は、上記2点のコメントに加えて、動物園水族館協会の繁殖賞に触れていたりと、充実した内容。当時の興奮と、大人になったマレーガビアルの姿を一緒に堪能できます。

このエリアでは、上記のワニ類にくわえて、

  • ケヅメリクガメ
  • アルダブラゾウガメ
  • ヒラリーカエルガメ
  • アカアシリクガメ
  • エロンガータリクガメ
  • ミツユビハコガメ

が上からみられる形で飼育されていました。

ここからはじまった、エリマキトカゲ

ワニ、中大型リクガメが両側に並ぶエリアを抜けて階段を降りると、造り付けのガラス窓のケージが並ぶ通路にでます。

この通路エリア、1993年から飼育されているアメリカドクトカゲがいたり、民家の壁にいるところをお巡りさんに保護されたコガネオオトカゲがいたりと見どころが沢山あるのですが、トピック的に取り上げたい種類が、エリマキトカゲ。

草津熱帯圏のエリマキトカゲ

エリマキトカゲは、昭和の時代にCMで一世を風靡したトカゲですが、国内で最初に持ち帰ったのがここの園長とのこと。現在飼育されているのは、3代目だそうです。

園長が持ち帰ったエリマキトカゲは、パプアニューギニア政府の許可を得て捕獲したそうです。園長自ら外国まで行って生体を捕まえてくる、そしてそれを累代飼育する。草津熱帯圏のレベルの高さと老舗度合いがよくわかります。

この通路にはほかに、

  • フロリダスッポン
  • インドハコスッポン
  • カミツキガメ
  • ワニガメ
  • マタマタ
  • ミナミテグー
  • ヒガシアオジタトカゲ
  • グリーンイグアナ
  • インドシナウォータードラゴン
  • サバンナオオトカゲ
  • ナイルオオトカゲ
  • フトアゴヒゲトカゲ
  • ミズオオトカゲ
  • ビルマホシガメ
  • インドホシガメ

がいました。

中小型コーナーはペットとして見かける普通種も多し

通路をぬけると、ドーム中央直下部に出ます。このあたりは、比較的小型の種類が多く、個人が使うような市販のケージによる展示もチラホラ。

珍しいところでは、1991年から飼育されているクレフトマゲクビガメがいましたが、次のような普通種もたくさん含まれていました。

  • テヅカミネコメガエル
  • ツノミカドヤモリ(ガーゴイルゲッコー)
  • グランディスヒルヤモリ
  • メキシコサラマンダー
  • イエアメガエル
  • オビタイガーサラマンダー
  • クレフトマゲクビガメ
草津熱帯圏のクレフトマゲクビガメ
  • ヒョウモントカゲモドキ
  • ニシアフリカトカゲモドキ
  • アフリカツメガエル
  • アカボシユビナガガエル
  • アズマヒキガエル
  • クランウェルツノガエル
  • ジュウジメドクアマガエル
  • ヨツユビリクガメ(ホルスフィールドリクガメ)
  • フチゾリリクガメ
草津熱帯圏のフチゾリリクガメ
  • トッケイヤモリ
  • アカハライモリ
  • ミツユビアンフューマ
  • シュレーゲルアオガエル
  • エボシカメレオン

水棲ガメとヘビのコーナー

さらに進んで再び通路に入ると、ヘビとミズガメのコーナーに入ります。大蛇系をはじめとする様々なヘビを飼育する造り付けのケージと、その向かいに中小型水ガメ類の個水槽が並んでいます。

ヘビの性格を書いたキャプションが面白い

ヘビやミズガメは、メンテナンスの都合からシンプルなレイアウトで飼われることが多いもの。そうしたレイアウトに、比較的地味な存在であるミズガメが並んでいたり、よく似た色合いの大型ヘビが並んでいたりすると、退屈な展示になりがちです。

草津熱帯圏のヘビのコーナーでは、通常のキャプションに加えて、ところどころに展示個体の説明文を掲示していました。大型ヘビだと、例えば次のような感じ。

草津熱帯圏のアメジストニシキヘビの説明

種としての特徴が詳しく記されていることに加え、世話をする立場からみた日常での姿が伝わってきて、読み応えがあります。

これを読みながら生体を眺めていくと、シンプルなケージに似た色合いのヘビがじっとしている姿が並ぶ展示も、飽きません。

草津熱帯圏では、ヘビ類は基本的にこのコーナーにまとめられていて、

  • ボアコンストリクター
  • アミメニシキヘビ
  • アカニシキヘビ(スマトラブラック)
  • ガーデンツリーボア
  • ビルマニシキヘビ(アルビノ個体のゴールデンパイソン)
  • アフリカニシキヘビ
  • ハイチボア
草津熱帯圏のハイチボアの説明
  • アメジストニシキヘビ
  • カーペットニシキヘビ
  • ボールニシキヘビ
  • アルバ―ティスニシキヘビ(シロクチニシキヘビ)
  • テキサスラットスネーク(リューシスティック)
  • キイロアナコンダ

がいました。

いつのまにか生まれていたミツユビハコガメ

中小型カメのコーナーは、

  • キイロドロガメ
  • カブトニオイガメ
  • ニホンイシガメ
  • アンナンガメ
  • ミツユビハコガメ
  • ミシシッピアカミミガメ
  • クサガメ

といったラインナップ。

ミツユビハコガメの展示には、「この個体は2017年の2月に自然繁殖した個体で、この子の親たちが暮らしている飼育場内を掃除中に発見、保護しました」とのコメントも。

生き物を飼育する者にとって繁殖は大きな目標ですが、いつの間に繁殖していた、というのんびり感が何ともいえません。

おそらく下の飼育場でのことと思われます。たしかに、自分より数倍大きなアカアシガメに混じってすこしも臆せず、元気に動き回るハコガメがいました。環境がいいのでしょう。

アカアシガメにまじって動き回るミツユビハコガメ

全国から泊まりがけで行く価値あり

草津熱帯圏は、素人には手が出せない、危険だったり希少だったりするものから、ウーパールーパーやヒョウモントカゲモドキ、クランウェルツノガエルのような普通種まで、様々な爬虫類両生類を展示していましす。

種類も、ワニ、水ガメ、リクガメ、ヘビ、トカゲ、ヤモリ、カエル、有尾類と幅広く網羅(ドーム外で、マダラファイアサラマンダー、マレーハコガメも飼育)。長年飼育されている個体が多く、生体の状態も生き生きとしていて、きちんとメンテナンスされた飼育環境は大変参考になります。

公営施設でもなく、大スポンサーがいるようにも見えない通常の民間施設で、ここまでのレベルのところはそうありません。

草津熱帯圏のシャムワニ剥製
老舗らしく、平成2年に40歳で死んだシャムワニの剥製が展示されていた

爬虫類両生類が好きな人には、必見の施設です。ただ、爬虫類両生類が好きな人がちゃんと見ると、2、3時間以上かかる見応え。関東圏から行く場合は日帰りで行けなくもないですが、日帰りだと温泉に入る余裕はありません。関東圏以外からは泊りがけとなりますが、温泉とあわせ、全国から泊りがけで行く価値のある場所だと思います。