野生でみかけた爬虫類・両生類」カテゴリーアーカイブ

遭遇!日本のトカゲモドキ

爬虫類両生類を扱う当サイトにいらっしゃった皆さんは、ヒョウモントカゲモドキをご存知だと思います。レオパードゲッコー略してレオパとも呼ばれる、大きな瞳と多様な模様をもつやわらかい感じの皮膚が特徴的なトカゲの一種です。

ヒョウモントカゲモドキは、爬虫類には珍しく繁殖技術がある程度確立されています。このため、①養殖個体(CB)が広く流通している、②人口餌への慣れ、ハンドリング耐性など被飼育種としての適性を備えている、③模様など品種にバリュエーションがある、といった特徴があります。鳥でいえばジュウシマツ、小動物で言えばハムスター、草木で言えばアサガオのようなポジションでしょうか。

飼育設備として大きな面積を必要とせず、音を出して泣かない、強いにおいを発しないなどの理由から、都会でも多くの方に飼育されています。相当な人気種、爬虫類好きであれば誰もが知る有名種ですが、日本に近縁種のトカゲモドキが生息していることはあまり知られていません。

その日本在来のトカゲモドキを、某所で偶然みかけるという大変得難い経験をしました。トカゲモドキ目当てで探しに行ったのではなく、他目的で歩いていたらたまたま、です。

見かけた場所は、暗いところで、岩場の上でした。視界を横切った姿かたちは、青みがかったヒョウモントカゲモドキそのもの。ペットとしてのイメージがあまりにも強かったため、野生でみかけたことにびっくりしました。

日本のトカゲモドキ

動きはものすごく素早い訳ではありませんでしたが、カメラを構えて写真を撮ったりしているうちに、するすると消えて行きました。

日本のトカゲモドキ

一緒にいた生き物に詳しい方によると、○○トカゲモドキという日本の在来種とのこと。希少種であり、これを採集することは法に触れるそうです。ただ、高値で取引されるらしく、販売目的での採集が後をたたないとのこと。

取り締まりもあるそうですが、外国人(中国人が多いとのこと)だと見つかっても一発アウトとはならないケースもあり、半分見つかることを覚悟の上でその地域に来る人がいるそうです。生息地は、普通の外人がウロウロするようなところではありませんし、目立つと思うのですが・・・。

野生生物関連での事件といえば、「警視庁いきものがかり」というとても面白い本があります。「全国でもきわめて珍しい『希少動物専門の警察官』」である福原秀一郎さんという方が書かれた、爬虫類含む動物関係の事案を扱った事件簿のような本です。わたしはちょうどこの本を読んだ後に、トカゲモドキを目撃&取り締まりの話を聞いたため、一見のんびりとしたその生息地にもそんな世界があるのか、と妙にリアルに感じました。

※日本には、ヒョウモントカゲモドキの仲間として、クロイワトカゲモドキ、マダラトカゲモドキ、クメトカゲモドキ、イヘヤトカゲモドキ、オビトカゲモドキなどが住んでいます。いずれも希少な種類ですので、今回の記事では詳しい生息地や種名の記載は控えさせて下さい。

 

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干からびたミミズを食べるヒガシニホントカゲ【動画】

ニホンカナヘビより警戒心が強く、人間が近づくとすぐ隠れてしまうニホントカゲ。そのニホントカゲが夢中で餌に食らいついている場面を、東京23区内で撮影しました。

ニホントカゲ(ヒガシニホントカゲ)が食べていたのは、道路上で干からびたミミズ。アリがたかっていて動かない状態でしたが、くわえて飲み込んでいました。トカゲ類は動くものに反応して餌を食べますが、動かないものでもエサと認識するんですね。アリがたかっていたから餌と認識出来たのか、別の要因からエサと認識したのかはわかりません。

ニホントカゲは警戒心が強く、人の気配を感じるとすぐ隠れてしまいますが、この時は餌への執着心が勝っていたようです。近寄っていくといったん隠れかけるも、エサのミミズのところまで戻ってきて採食。しゃがみこんで携帯を近づけて撮影しても、まったく動じませんでした。撮影後も、茂みに隠れることなく近くをウロウロしていました。

東京都内でみる野生の爬虫類両生類(市部にもいたアカガエル)

東京都内(奥多摩方面や島嶼地域でない市部)は、開発が進み人工物で覆われた、野生生物にとっては住みにくいところ。爬虫類両生類も、少なくとも私の住む地域では、アズマヒキガエルやニホンヤモリ、ミシシッピアカミミガメやニホンカナヘビなど、一部の都市部にうまく適応している種類以外を日常的に見かけることは難しくなってきています。アオダイショウ、ヒバカリ、ニホントカゲ、ニホンスッポンなどはまだまだ出会う機会もありますが、水田や湿地帯など水場を必要とする種類は、本当に見かけることが少なくなりました。

ただ、東京の市部からこういった爬虫類両生類が全く消え去ったのかといえば、そんなことはないはず。いるところにはいる、あたりをつけて探せばいるものです。そこで、爬虫類両生類が活発に活動しはじめる5月の上旬に、いそうな場所にあたりをつけて行ってみることにしました。

その「いそうな場所」ですが、今回は自然な水場と雑木林などが隣接している谷戸地形の場所を選びました。

谷戸の風景

谷戸とは、小高い丘や台地の麓にある、切り込まれて谷になったような地形を指す言葉。高低差がある土地ではよくみられることですが、地形に沿って水が流れ込んでいたり湧水があったりすることが多く、水が豊かで自然に囲まれた生き物にとって暮らしやすい場所です。

今回行ってみたのは、都内にいくつか残されている谷戸群のうちの一つ。そこには、ひとつの丘陵地の麓にいくつかの谷戸があります。地図を見ながら、水場がある谷戸ををピックアップして回ることにしました。

最初に行った谷戸は、谷間の先端の部分に池(おそらく湧水)があり、そこから水が流れ出しているかたち。池は、広葉樹が水面上に張り出していて、季節になればいかにもモリアオガエルが産卵に来そうな雰囲気です。

谷戸の奥にある池

池から流れだす小川には、ヒキガエルのオタマジャクシが群れをなしています。例によって、アカミミガメもいました。

池から流れ出る小川

ヒキガエルのオタマジャクシ

ミシシッピアカミミガメ

尾根をのぼって、次の谷戸まで移動します。ここは、田んぼと湿地帯がある最も有望な谷戸。田んぼは代掻きが終わって田植え前の状態でした。畔をあるいていると、カエルの鳴き声があちこちから聞こえてきます。声の主を探すのですが、見当たらず。

尾根を越えて別の谷戸へ

別の谷戸

谷戸の田んぼ

カエルの鳴き声は聞こえるものの、姿は見えない

田んぼエリアをあとに、奥の湿地帯方面へと進みます。このあたりでウシガエルの鳴き声が聞こえましたが、姿はみえません。

田んぼの奥の湿地帯へ進む

このあたりではウシガエルの鳴き声が聞こえた

すこし進んだ時に、初めてカエルらしきものを見つけました。

アカガエル

アカガエルです。

本州に住むアカガエルには、ニホンアカガエルとヤマアカガエルがいます。見分け方は、背中を通る二本の線がまっすぐなのがニホンアカガエル、肩のあたりで曲がるのがヤマアカガエルだそうです。
また、ヤマアカガエルは顎の縁に、黒い斑点があるとのこと。

同じカエルを陸で撮った写真で見ると、背中の線はわりとまっすぐに見えます。横からの写真をみても、顎に黒い斑点はありません。このカエルは、ニホンアカガエルである可能性が高いと思います。

アカガエル

同じ場所には、オタマジャクシが沢山いました。オタマジャクシとともに、他の生き物の幼生と思われるものや、エビもいます。すぐ近くに林があるので、生物相が豊かです。

沸き立つオタマジャクシ

オタマジャクシ、エビ、何か別の幼生

アカガエルやオタマジャクシがいた周辺

さて、このあと周りの林の中を散策して戻る途中、畦道でヒバカリを見かけました。

ヒバカリがいた畦道

茂みの上で日光浴をしていたものの、通りかかるとすぐに茂みのなかへ。写真は撮れませんでしたが、黒みが強く、太さが散水ホースくらいある、ヒバカリとしては大きい個体でした。

今回行った場所は、東京の市部。アカガエルやヒバカリといった都市部からいなくなった種類も、すこし歩いただけで見かけることが出来ました。やはり、里山の風景が残っているところは生物相が豊かですね。

数少なくなった、東京都内のこのような場所・このような場所の爬虫類両生類、しっかり守っていきたいと思いました。

 

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対馬・大陸とのつながりを感じさせるツシマスベトカゲ

長崎県の対馬に住む、ツシマスベトカゲ。日本の爬虫類両生類を幅広くカバーしている「日本の爬虫類・両生類飼育図鑑」に、珍しく写真が載っていない種類です。幸いにも、対馬にてその姿を目撃、写真に収めることができましたのでご紹介します。

烏帽子岳展望所からみた対馬

対馬は、淡路島より広い面積を持つ大きな離島。細長い地形をもち、博多から130キロ、釜山から50キロの位置にあります。地理的な要因から、古来より大陸(韓国)の影響を常に受け続けてきた歴史を持ち、実際に訪ねてみると、現在でも身をもってそれを実感することが出来ます。

対馬に来る観光客は、釜山から船でたった40分という距離的理由もあり、日本人より韓国人の方が圧倒的に多いようです。大きなホテルは韓国資本によって運営され、市街には韓国人向けに日本の化粧品・日用品などを売る免税店が店を構えます。

厳原の免税店

韓国側の端には韓国展望所があり、天気の良い日は釜山の街並みがうっすらと見えます。展望所のすぐ前には、国境を守る自衛隊の基地が。ここでは、携帯の電波も韓国のものが入ります。

韓国展望所

生態系も、大陸からの影響を受けています。有名なツシマヤマネコは、大陸のベンガルヤマネコの亜種。近年も、ツマアカスズメバチという大陸のスズメバチが外来種として流入し、大きな影響が生じています。

対馬は、もともとニホンミツバチの採蜜が盛んで、蜂蜜の名産地でした。専門の養蜂業者がいるというよりは、一般家庭において、蜂洞と呼ばれる中をくり抜いた木の株を置いて、蜂を呼び込んで蜜をとるという規模感で営まれてきました。

蜂胴 蜂が営巣する木の洞穴を模した形をしている

設置された蜂洞のようす

蜂洞はあちこちに置かれ、形も様々

しかし、ツマアカスズメバチの侵入によってニホンミツバチが逃げてしまい、ハチミツがほとんど採れなくなってしまったとのこと。

もともとスズメバチは、ニホンミツバチの蜜や幼虫を狙って巣を襲います。これに対してミツバチは、集団でスズメバチを取り囲んで、自らの体温でもってスズメバチを蒸し殺すという方法で対抗していました。ただ、この方法が通用するのは在来のスズメバチだけ。ツマアカスズメバチにはこれが効かず、ニホンミツバチが大打撃を受けているそうです。

さて、そんな対馬で、幸運にも日本では対馬にしかいないツシマスベトカゲを見かけることが出来ました。目撃現場は、山の中の陽当たりがある石垣付近。

対馬の山の中の石塁跡

対馬は、もともと全体的に山がちな地形です。その山の中に、白村江の戦いのあと、韓国からの攻撃に備えて石塁が築かれました。この石塁は、国の特別史跡に指定されている貴重なものですが、長年の経過によりかなりの部分が崩れかかった状態です。

対馬の山の中の石塁跡

山の中の、崩れかかった石積み。石垣付近は木が切り開かれており、陽当たりもあります。まさに、ヘビやトカゲにとっては理想的な環境。そんな場所にいたところを撮ったのが下の一枚。

ツシマスベトカゲ

現場でみた時は、大きさが小さいこと、すぐに隠れてしまったことから、同じように金属光沢をもつ普通のニホントカゲと同じような印象しか残りませんでした。ただ、後から写真を見ると、鱗がきめ細やかで、真鍮のような鈍い光沢を発していて、ニホントカゲとは異なる外見ですね。背中と胴の側面の間に、黒っぽい線が入っているのも特徴的です。

参考のため、「ニューワイド学研の図鑑 爬虫類・両生類」における記載を抜粋しておきます。

・平地から山地にかけて対馬のほぼ全域に分布し、石の下やたおれた木の下、落ち葉の中などで見ることができます。昼行性で小さな昆虫を食べます。

近年まで対馬固有種と考えられてきたツシマスベトカゲ。最近、朝鮮半島にも分布していることがわかってきたようです。爬虫類として、大陸との中継地点であり続ける対馬を象徴する存在といえますね。

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野生のアカハライモリを尾瀬でみる

尾瀬は、群馬県・福島県・新潟県に跨がる、周りを山で囲まれた広大な湿原。たどり着くのが大変な奥深い場所にあることや、人間による農業利用等に適さない湿地帯であること、長い冬場の気象環境が厳しいことなどから、あまり人の手が入らない状態で残されてきました。

尾瀬の風景

20世紀に入ってから、周りを高い山で囲まれた地形を利用して発電用のダムとして開発する話が進んだものの、貴重な湿原としての意義が認められて計画は見送りに。以後は国立公園に指定され、守るべき自然環境としてしっかり保全された場所となっています。

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