イギリス・ロンドンには、世界最初の科学動物園とされるロンドン動物園があります。そのロンドン動物園のなかにある、爬虫類両生類の展示施設を見に行ってきましたのでご紹介します。
目次
ロンドン動物園への行き方、アクセス
ロンドン動物園は、ロンドンの郊外にあります。中心部からの距離は、ちょっと短めの通勤圏というイメージ。地下鉄にしばらく乗って、最寄りのカムデンタウン駅から10分程度歩いたところにあり、広い公園(リージェンツ・パーク)に隣接しています。
チケットを買って、中に入ります。チケット代は約30ポンド。1ポンド150円換算で4500円、200円換算で6000円です!日本だと、公的施設であることが多い動物園ってそんなに高くないですよね。維持費用にお金がかかりそうな水族館も、そこまで高いところは記憶にありません。ロンドンは全般的に物価が高めですが、それにしても高い入場料です。
入場後、他の動物たちを眺めるのもそこそこに、爬虫類エリアへ。爬虫類エリアは、①爬虫類館の建物、②別棟のコモドドラゴンと何種類かのリクガメたちの飼育棟、③ゾウガメの飼育エリアに分かれています。
見せ方に工夫あり!ロンドン動物園爬虫類館の屋内展示
爬虫類館の建物の外観は、結構お洒落でした。映画ハリー・ポッターシリーズのなかに爬虫類が登場する場面があるらしく、その撮影現場にもなったようです。
建物内のつくりは、縦長のロの字型の回廊があって、回廊に沿って両側に展示用の飼育ゲージが並ぶ仕組み。
ゾウガメやコモドオオトカゲなどは別エリアで飼育されており、ここは広い飼育スペースを要求しない小型種の展示がメインですが、突き当たりの正面奥にはワニ(フィリピンクロコダイル)もいます。
フィリピンクロコダイルは、陸地と水場がある飼育スペースを上から眺めて観察する仕組みとなっていました。幼体を観察できる水槽も別にあって、そこでは横から水中での様子を見ることができます。
爬虫類館内に並んでいる展示は、それぞれ生育環境を再現したレイアウトになっています。樹上性と思われる種類には、植物を使った立体的なレイアウトが組まれ、砂漠・砂地が生息地となっているものには、床材に砂を使ったケージが組まれています。水場がすみかとなっている種類には、ケージ内に水の流れや止水域を作って環境を再現しています。以下、種類ごとに印象に残った展示をピックアップしてみます。
ロンドン動物園のカエル
カエル類は、種類に応じてテラリウム・アクアリウム・アクアテラリウムで展示されています。
アフリカウシガエルは、地面に枯葉と湿った土が敷かれたテラリウムで飼育。床材の土にはある程度の厚みを持たせているみたいで、この日は潜ってしまってよく探さないと見つかりませんでした。
水中棲のアフリカツメガエルは、熱帯魚水槽で成長の早い水草としてよく使われるハイグロフィラが繁茂するアクアリウムの中にいました。水草が足場になってカエルも落ち着いています。
ベトナムコケガエル、コバルトヤドクガエル、チャスジアオガエル(ワラストビガエルの近種)は、ロンドン動物園では比較的水場面積を広くとったアクアテラリウムで飼育されていました。
コケガエルは壁際の水面に浮かんでいる場面が、コバルトヤドクガエルは陸地部分を動き回っている場面が、チャスジアオガエルは水から突き出た木の枝の上にいる場面(このページ最後の生餌の項にケージ全体の写真があります)が多かったです。
カエルは、このほかに後に紹介するイエアメガエルがいました。
ロンドン動物園のカメ
乾燥した環境を好むエジプトリクガメは、砂地に岩を配した乾いた感じのレイアウトで飼育。ちなみに、ここ爬虫類館の建物にいたリクガメはこのエジプトリクガメだけで、他はロンドン動物園のリクガメとコモドドラゴンで紹介する別棟で飼育されています。
水棲ガメのキボシイシガメは、水場を広くとったレイアウト。このあと紹介するアンナンガメも同じでした。水棲カメは、この他にマコードナガクビガメが水場と水面に突き出る流木からなるケージで飼育されていました。
リクガメ、水棲ガメ以外では、トゲヤマガメのケージがありました。
ロンドン動物園のヘビ
この爬虫類館の展示は、ヘビの種類が一番多かったと感じています。写真は一部の種類しか掲載できませんが、種類名はできる限り列挙しておこうと思います。
パフアダーのケージは、人家を模したレイアウト。乾き目の砂を床材としたケージです。
乾燥気味のケージで飼育されていたヘビは、このほかにズグロニシキヘビやヨコバイガラガラヘビ(サイドワインダー)、ニシダイヤガラガラヘビ、ナイリクタイパンなどがいました。
樹上性で高温多湿を好むというエメラルドツリーボアのケージは、乾燥気味のヘビのケージとは全く違う作り。地面と平行に太い木の枝を配し、下は深さのある水場としていました。植物は少な目です。
このように床が水槽となっているレイアウトは、他のヘビのケージでは見かけませんでした。ただ、ケージ内にある程度の面積以上の水場が設けられていた種類は、水場割合が広い順にオオアナコンダ(グリーンアナコンダ)、キングコブラ、ミズコブラモドキなど何種類かいました。
ケージの中が、木の枝などを立体的に配した作りとなっていたのは、マングローブヘビ(マングローブスネーク)、ライノラットスネーク(ベトナムテングヘビ)、ジャマイカボア、ジャングルカーペットパイソン(ジャングルカーペットニシキヘビ)など。
このほか、デュメリルボア、ライノセラスアダー、プエーブラミルクヘビ(プエブランミルクスネーク)などが飼育されていました。
このように、ロンドン動物園爬虫類館はヘビの展示種類数が多いのですが、なかでも毒蛇の割合が高いように感じます。ちなみに、爬虫類館入口最初の生体はキングコブラ、出口最後の生体はブラックマンバでした。
ロンドン動物園のトカゲ
ある程度の太さの木の枝と植物を組み合わせた立体的なレイアウトにいたのが、ベイカートゲオイグアナ、ミドリホソオオトカゲ(別名エメラルドツリーモニター)、アオホソオオトカゲ(別名ブルーツリーモニター)、ヒロオビフィジーイグアナ。ケージ内にはライトによるホットスポットも作り出されています。
ストケスイワトカゲのレイアウトは、乾いた砂・土と組み合わさった岩で構成される平面的なレイアウト。
樹上性トカゲであるツリーリザードのレイアウトでは、縦方向に複数の木の幹が配され、トカゲは基本的に垂直な木の幹にとまっていました。
大型種のメキシコドクトカゲは、下の写真のようなやや乾き目の腐植質の床材で飼育。大型種だけあってケージは広めで、平面的な造りとなっています。
ドクトカゲでは、アメリカドクトカゲのケージもあり、同じく乾いた土のうえに岩を配したレイアウトとなっていました。
このほか、トカゲの大型種ではフィリピンウォーターモニター(ミズオオトカゲの一種)の大きな横長のケージが印象に残りました。中央に水たまりを配し、直径30センチくらいの倒木を斜めに配したレイアウトでしたが、オオトカゲ自体は岩を模した壁を登って天井近くで休んでいました。また、その他のトカゲとして、ヘビトカゲ(アシナシトカゲ)のケージがありました。
ロンドン動物園の有尾類(イモリ、サンショウウオ)
ウーパールーパーの水槽は、細かい白砂を敷いた水槽に、岩を積み重ね、水草を配したつくり。水草は、アナカリスやウイローモスが使われていました。
人工物を使ったレイアウト
ロンドン動物園の展示で面白かったのは、飼育ケージ内の導線や床材、水場・湿度などの物理的環境だけでなく、人間から見た生息場所の視覚的イメージにも気を使ったレイアウトが多かったこと。
人家近くにも生息するというイエアメガエルの展示は、ケージ内に実物大に近い洗面所やトイレがあるレイアウトとなっていました。
食用にされるアンナンガメのケージは、ストックされた飲食店の台所を模したもの。下の写真のように、メニューまでついていました。
オタマジャクシ、小型サンショウウオの展示方法
オタマジャクシのコーナーには、宝石屋やアクセサリーショップにあるガラスケースのような形の水槽があり、一杯に満たされた水の中で泳ぐおたまじゃくしが展示されていました。
おたまじゃくしは大きさが小さいだけに、背景の色が暗いと個体の存在や姿かたちが判別しにくい展示となってしまいます。動きも平面的で、あまり水深を必要としないため、横から眺める水槽に入れても水面もしくは底の方にかたまってしまいそう。なるほど上手い見せ方だなと感じました。
バックヤードを見せるコーナー
展示の一つとしてバックヤード環境を見せるコーナーも。家庭での飼育に使いそうな小さな飼育ケージが並ぶバックヤードそのものが、ガラス越しに見られるようになっています。手前には、ガラスケース状の水槽があって、小型サンショウウオの姿を見ることが出来ます。
ロンドン動物園爬虫類館では、バッタを生餌として使っていた
さて、レイアウトの話ばかりとなりましたが、エサについても気になったことがひとつあります。
生き餌と思われる昆虫が入っている展示ケージが複数あったのですが、入っていたのは、日本のイナゴのような大きさ・形のバッタ。日本では、跳躍力の強いバッタは餌向きではないとされることがあります。そのため餌として与える場合、後ろ足をとってから与える人もいるようですが、ここではそのようなことはしていませんでした。
バッタは日本ではあまり一般的でない方の餌だと思いますが、イギリスでは継続的に入手しやすい餌なのでしょう。原著が英国ででている「Q&Aマニュアル爬虫両生類飼育入門」には、市販されている昆虫類として、コオロギやミールワーム、ショウジョウバエと並んでエジプトツチイナゴ、トビバッタの名があります。
バッタは浅い地中にまとめて卵を産み付けます。卵を確保し、温度処理を工夫して孵化時期をずらせば安定的供給ができそうな気がします。
この後は、ロンドン動物園のリクガメとコモドドラゴンへ続きます。