バンコク・タイ赤十字協会スネークファーム

 タイ赤十字協会スネークファームは、毒蛇血清の研究機関が擁するヘビ観覧施設。日本でこういった組織が運営する同種の施設といえば、群馬県にあるジャパンスネークセンターが真っ先に思い浮かびます。

スネークファームの入り口

ジャパンスネークセンターは、人の命を救う大事な役割を果たす組織が運営していますが、一般人向け展示部分はB級スポット的な紹介をされることが多く、とてもユニークな雰囲気。一方のタイのスネークセンターは、どういった場所なのでしょうか。

タイ赤十字協会スネークファームへのアクセス、行き方

タイ赤十字スネークファームは、大都市バンコクのど真ん中にあります。

BTS(高架鉄道)で行く場合は、シーロム線サラデーン駅で下車。1番出口をでて、日本人歓楽街として有名なタニヤ通りを抜け、突き当たった大通りの向こう側にあります。大通りは上に高架が通っていて横切れないため、右側に進んで交差点から回り込みます。

スネークファームの行き方

MRTブルーライン(地下鉄)で行く場合は、サムヤーン駅2番出口から通り沿いをルンピニー方面へ進むと着きます。下の写真はルンピニー方面から撮った写真で、青いビルの手前あたりが入口。

青いビルの手前あたりが入口

大通りに面した入口をはいると、赤十字関係の大きな建物がたっています。日本のスネークセンターとはちょっと雰囲気が違いますね・・・。タイのスネークファームは、この建物を回り込んだ裏側の細い道をはいったところにあります。

世界最大のヘビ・アミメニシキヘビとオオアナコンダ

料金所で入場料を払って中に入ると、目の前に大きな屋根付きの展示スペースがありました。まずは、この展示スペースの両脇にあるコーナーから見ていきます。

屋根付き展示スペースの両脇には、小学校にある広いウサギ小屋くらいの六角形の飼育小屋が3つ。それぞれ、アミメニシキヘビ(Reticulated python)、オオアナコンダ、ビルマニシキヘビ(Burmese python)、といった大型ヘビが飼育されていました。

アミメニシキヘビとオオアナアナコンダは、世界最大のヘビ。アミメニシキヘビが最長、オオアナコンダが最重です。この2種類を同時に見られる場所は、意外と多くありません。普通の動物園ならメイン展示にもってくる大物が、ひっそりと脇で飼育されています。

屋根付きスペースの脇には、全体がしっかりした金網で覆われた、屋外型ヘビ飼育場がありました。上部は屋根でなく金網だったので、雨風も含め野外と同じ条件のケージです。

スネークファームのヘビ飼育場

中には広い池があり、草木が茂り自然な雰囲気となっています。覗き込むと、おおきな抜け殻が木の枝からぶら下がっているのが見えました。

抜け殻が枝からぶら下がる

この形態は、岩国の白蛇観覧所に似ています。スペースが許す限り、ヘビにはこのようなケージが一つの理想形なのかもしれません。

日本ではあまり見かけない水ヘビ

屋外展示で特筆すべきだったのは、日本ではあまり見かけない水ヘビ(Water snake)の水槽があったこと。

水ヘビは、大きめの太いヒバカリといった大きさのヘビで、基本的に水の中にいる水棲種のようです。

水ヘビの飼育ケージ

飼育されていたのは、割れた大きな植木鉢と流木をシェルターとして配した水槽。面積1平方メートル・水深10センチほどの大きさです。流木にサトイモ科の植物を植え、水面にボタンウキクサを浮かべていました。

水ヘビは何匹もの個体がシェルターの下に固まっていて、頻繁に顔を伸ばしたり引っ込めたり。じっとしているという感じでなく、相当よく動くヘビでした。

水中で固まる水ヘビ

水ヘビは日本ではあまり見かけないタイプのヘビですが、屋内でも飼育されていましたし、バンコクの別の動物園にもいましたのでタイでは普通種なのかもしれません。

この他、屋外には地元種と思われるクサリヘビ科の毒蛇(Malayan pit viper 、Big-eyed pit viper、Siamese Russell’s viper、vogel’s green pit viper)の飼育スペースがありました。

屋根付き屋外飼育スペースの工夫されたヘビ展示

続いて、屋外のメイン展示・屋根付き展示スペースに進みます。

屋外屋根付き展示スペース

ここで印象に残ったのが、飼育ケージの形態。ヘビに限らず、爬虫類両生類は上から見せるか、横から見せるかによって見た感じが変わります。

一般的なのは、ロンドン動物園爬虫類館や東山動物園自然動物館のように、ガラスケージの横から見せるタイプ。これだと、ガラスをとおして横から間近に生体を見ることができます。

一方、ジャパンスネークセンターの野外放飼場のように、逃げないように周りを囲った上で上から見せる展示方法もあります。

上から見る方式は、実際の野外での生息環境に近い形を再現しやすいメリットがあります。一方、生体との距離が遠くなりやすく顔も見えないため、この形式で沢山のヘビを並べられても辛いものがあります。

タイ赤十字協会の展示形式は上手く考えられていて、上から見られる飼育ケージの側面を一部ガラス張りとし、両者のいいとこ取りをしていました。

上からも横からも見れるケージ

ガラスから覗きこめるよう、シェルターの向きも工夫。植木鉢のシェルターに陣取るヘビが、よく見えます。

シェルターの向きも工夫
シェルターの中のブラッドパイソン

この屋根付き屋外展示スペースには、このような上から覗くタイプの飼育スペースが複数あり、ホウシャナメラ(Copperhead rat snake)、Puff faced water snake、Rainbow water snake、Elephant trunk snake、ヒメナンダ(Indochinese rat snake)、Banded rat snake、ブラッドパイソン(Blood python)、Yellow spotted keelback snakeなどが飼育展示されていました。

また、ところどころに普通のケージも配されており、セラムニシキヘビ(Moluccan python)、シロクチニシキヘビ(White-lipped python)、ボールパイソン、グリーンパイソン、コーンスネーク、ブラジルレインボーボア、サバクキングヘビ、ボアコンストリクターなどが飼育されていました。

多数の生体と整備された飼育環境が見どころ、屋内展示1階

続いて、建物の中に入ります。一階は、暗めの照明のフロアに、ガラス張り飼育ケージが並ぶ造り。ヘビによってはかなり広いスペースで飼育されています。

タイ赤十字協会スネークセンター屋内展示スペースの様子

目をひいたのは、グリーンの美しいヘビ・ホソツラナメラ(Red-tailed rat snake)。広いケージに配された木の枝の上にいました。

ホソツラナメラ(Red-tailed rat snake)
Red-tailed rat snakeのケージ

Beautiful pit viperのケージの水場には、生餌と思われるカエルがいました。バンコクの爬虫類市場・チャトチャックマーケットで、この種のカエルがまとめて販売されていたのを見ましたので、タイでは一般的な生餌だと思われます。

右上がBeautiful pit viper

このスペースの飼育ケージは、すべて造りつけの立派なものでした。ケージごとに排水設備を完備した水場があり、床面はメンテナンス性を確保しつつも形状にこだわった樹脂製。ケージ内のレイアウトも、植物(人工観葉植物)と生体にあった太さ/大きさの木の枝を基本構成要素とする、シンプルながら過不足のないレイアウトです。

生体の展示数はかなり多く、運営母体が血清の研究機関ということもあってか毒蛇が目立ちました。以下、訪問日に見ることのできた種類名を列記します(屋根付きスペースなどで既出のものを除く)。

Red tailed pipe snake、サンビームヘビ(sunbeam snake)、Ridley’s stripe tailed rat snake、Red cat eye snake、Malayan mangrove cat eye snake、Dog toothed cat eye snake、Green cat eye snake、Gray banded cat eye snake、ククリヘビ(Kukri snake)、セイブシシバナヘビ、Long-nosed whip snake、White-lipped pit viper、Mangrove pit viper、Golden spitting cobra、Monocellate cobra、Indochinese spitting cobra、King cobra、Malayan krait、Banded krait、Yellow banded krait、Siamese rusell’s viper、オオカサントウ(Kneeled rat snake)。

壁を登るOrnate gliding snake
ゴールデントビヘビ(Ornate gliding snake)という異様に身体能力の高いグリーンの長身のヘビ。このあと天井に貼りつくなど、ケージ内を自由自在に動き回っていた。

2階には、日本ではあまり見かけない形の孵卵器も

2階は、各種蛇のホルマリン漬け標本や、巨大蛇の骨格標本・剥製が並ぶスペース。ヘビに関する解説パネルの展示も多数あります。

静的な展示が並ぶなかで目立っていたのが、ヘビの卵の孵卵器。日本では、タッパーのバーミキュライトの中に卵を入れ、保温器に入れる形式の孵卵器をよく見ますが、タイの孵卵器はこんな感じ。

スネークファームの孵卵器

下の方に温かい水があり、その熱で保温している模様。ピンクの容器はプラスチックのザルで、この中に卵が直に置かれています。

ザルの上に卵が置かれている

こんなもので大丈夫かいな、と思ってしまいますが、エッグインキュベーターに貼られた大きなラベルには、ザルの中で孵化した子ヘビの写真が印刷されていました。

ラベルには、孵化した子ヘビの写真が・・・

血清研究機関によるヘビのショー

さて、このタイ赤十字協会スネークファームでは、屋外の屋根付きスペースでヘビのショーを開催しています。

睨みあいの後、コブラを取り押さえた職員

内容は、本物のコブラと正面からにらみ合った後、素手でつかみに行ったり、太いヘビを体に巻き付けたりといった、ヘビ使いショー的なもの。ジョークも交えた面白い構成ですが、出てくる人は全員、赤十字のマーク入りの白衣を着ています。

このあと、ヘビとの撮影タイムへ

ショーの後には、大蛇とのふれあい・撮影タイムもありました。

ヘビのショーは、特定曜日の特定時間帯に開催されますので、見たい方はスケジュールの事前確認が必要です。また、このスネークファーム自体、便利な場所にあるものの営業時間は長くないため(訪問日時点で平日は9:30-15:30、休日は9:30-13:00)、注意が必要です。

バンコク・タイ赤十字スネークファームは、立地や施設の雰囲気こそ日本のスネークセンターと違いますが、①毒蛇血清にかかわる重要な役割を果たしていること、②多種類のヘビの飼育・展示に力を入れていること、③面白いショーやふれあい含む体験・解説面が充実していることなど、根底のところで共通する点が多々ありました。

ヘビ好きなら必見ですし、とくに爬虫類好きでなくても楽しめる、おすすめの場所だと思います。

バンコク・タイ赤十字協会スネークファーム」への1件のフィードバック

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